ミケーネ文明 印刷書籍

著者:大久保栄次
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大久保栄次著 印刷書籍・電子書籍
エーゲ海ミノア文明・ミケーネ文明の遺産 遺跡と出土品詳細データ

ミケーネ文明の遺産 厳選出土品200点

・サブタイトル: 精密イラスト画による出土品からエーゲ海先史文明を旅する
・表記: 日本語
・形式: ペーパーバック
・印刷: 光沢なし最上質紙 高鮮明度プレミアムインキ
・サイズ: B5版 219ページ 厚さ1.3cm
・販売: Amazonネットワーク/Amazon.co.jp

内容概要

 本書は、B5版・215ページ、ギリシアの先史ミケーネ文明遺跡から発掘された主要出土品の「精密イラスト画&データブック」です。
 本書はミケーネ文明の最大センターであったミケーネ宮殿遺跡をメインに、ペロポネソス・アルゴス地方やメッセニア地方などの重要遺跡からの発掘品、「厳選出土品200点」をピックアップしています。解説する出土品の90%以上は精密イラスト画で、残りは写真で公開します。
 アテネ国立考古学博物館を初め、ギリシア各地の考古学博物館で展示公開されている出土品の中から、特に厳選した重要な作品を介して、ミケーネ文明の「美と工芸の世界」へ誘います。


内容:

I    「ミケーネ文明」とは?
II-1  金製品/金製カップ
II-2  金製品/金製リング
II-3  金製品/金製マスク・王冠
II-4  金製品/金製ネックレース・イヤリング・ヘアピン
II-5  金製品/金製小品・シート加工品
III   銀製品
IV   半貴石・ガラスペースト・青銅製宝飾品
V    青銅製剣・武器
VI-1  陶器/初期ヘラディックEHII期〜後期ヘラディックLHI期
VI-2  陶器/後期ヘラディックLHII期
VI-3  陶器/後期ヘラディックLHIIIA期
VI-4  陶器/後期ヘラディックLHIIIB期
VI-5  陶器/後期ヘラディックLHIIIC期
VII   崇拝像
VIII  フレスコ画
IX   石製印章
X    石製品
XI    線文字B粘土板
XII   象牙品
XIII  青銅製日用品

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サンプル・ページ(抜粋)
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II-1 金製品/金製カップ

 後期ヘラディックLHII期・紀元前1450年頃、クレタ島への攻撃を仕掛け、ミノア文明の崩壊への序曲を弾いた「侵攻ミケーネ人」、そのギリシア本土ミケーネ文明の本拠地は、供給地エジプト(生産地=Nubia王国 エジプト南部〜スーダン)やバルカン地方から膨大な量の金を輸入、後に紀元前8世紀の「盲目の吟遊詩人」とされる叙事詩作家 ホメーロスHomerが言う「黄金に富むミケーネMycenae Rich in Gold」、ペロポネソス・アルゴス地方のミケーネ宮殿であった。

 1876年、「宝探しの考古学者」とも言われたドイツ人実業家シュリーマンJ.H. Schliemannによる、ミケーネ宮殿区域・円形墳墓Aの発掘で出土した《アガメムノンの金製マスクGold Mask of Agamemnon》の例を見るように、ミケーネ文明では「金 Gold」は統治者の最もたる象徴でもあった。

ミケーネ文明、ミケーネ宮殿遺跡とその周辺遺跡からの宝飾品の出土、特に金製品Gold Jewelry Goodsではその素材の貴重性や作品に表現された様式やモチーフからして、その所有者は宮殿に居住した王家・親族、貴族階級など極めて尊貴な人達であったと断定できる。しかも、その出土スポットは宮殿や邸宅遺跡からはやや少なく、現在までの所、そのほとんどは金製品の所有者であった尊貴な人達が埋葬された、宮殿に近接した墳墓遺跡の発掘によりもたらされている。


II-1-01 金製ゴブレット杯

          ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、金製ゴブレット盃

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴IV墓
表現:金製ゴブレット杯、押しつぶれた状態で出土〜やや復元状態
側面胴部=ロゼッタ紋様の打出し加工/ハンドル&フット部=造粒装飾
年代: LHI期・紀元前1550年頃
展示:NAM・登録番号351
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


II-1-02 金製カップ 「ツタ」の連鎖紋様

          ミケーネ宮殿遺跡 デンドラ遺跡 金製カップ ツタ紋様

出土遺跡:デンドラ遺跡Dendra・横穴墓10号墓
表現:金製カップ、胴部側面=連鎖するツタ葉の打出し加工・ロゼッタ紋様
口縁部・リングハンドル=造粒装飾/クレタ島ミノア文明からの献上品?
年代:LHIIIA1期・紀元前1400年〜前1375年
展示:NAM・登録番号8743/口縁部径D130mm・高さ(ハンドル除く)H50mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


II-2-09 金製印章 「グリフィン」の絵柄

          ミケーネ宮殿遺跡 ネストル宮殿遺跡 トロス式墳墓IV墓 金製印章 グリフィン絵柄

出土遺跡:ネストル宮殿遺跡Nestor’s Palace・「王家の墳墓」・トロス式墳墓IV墓
表現:クッション形状・ビーズ形式・金製印章
羽根を広げるグリフィン・トリグリフ紋様/裏面=菱形(網目)紋様
年代:MHIII期〜LHIIA期・紀元前1650年〜前1450年
展示:NAM・登録番号7986/L27mm・W21mm・厚さT6mm
現地:ペロポネソス・メッセニア地方
描画:大久保栄次


ネストル宮殿遺跡Nestor’s Palace 「王家の墳墓」・トロス式墳墓IV墓

            ミケーネ宮殿遺跡 ネストル宮殿遺跡 トロス式墳墓IV墓

遺跡:ネストル宮殿遺跡・「王家の墳墓」・トロス式墳墓IV墓(1982年時点)
状態:ミケーネ様式トロス式墳墓/トロス部内径9.35m・埋葬床面=「半地下式」
天井部=発掘後のコンクリート復元
年代:MHIII期〜LHIIIA期
埋葬:紀元前1650年〜紀元前1450年まで継続的に200年間
             〜紀元前1350年頃まで断続的に100年間
現地:ペロポネソス・メッセニア地方
描画:大久保栄次


II-2-12 金製印章

          

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴III墓
表現:クッション形状・ビーズ形式・金製印章/ライオンと闘うミケーネ勇者
年代:LHI期・紀元前1550年〜前1500年
展示:NAM・登録番号33/L20mm・W15mm・厚さT5mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


II-3 金製品/金製マスク・王冠

 ミケーネ宮殿遺跡・ライオン門Lion Gateから入城して右側、円形墳墓A(Grave Circle A)では、外側サークルの最大外周径が約27.5m、内側サークルの内周径は約25m、地表面の二重の石板サークル内に深く掘られた6か所の竪穴墓Shaft Graveで構成されている。
 1876年、ドイツ人実業家シュリーマンの発掘作業で「竪穴T墓〜竪穴X墓」が、その後、ギリシアの研究者パナギオティス・スタマタキスPanagiotis Stamatakisにより「竪穴Y墓」が発見された。

 王と王妃や王族などミケーネ宮殿の最高位にあった合計19人が埋葬された円形墳墓Aからは、男性被葬者の顔を覆う金製デスマスクや金製カップを初め、金製王冠、女性王族が装着したであろうイヤリングや指輪リングなどのまばゆく輝く宝飾品、金と特殊な金属で象嵌された見事な装飾短剣、あるいは色々な銀製品や青銅製の容器類そして初期ミケーネ文明の美しい絵柄の特徴的な陶器などが限りないほど出土している。

 最も後から発掘された男性二人が埋葬されていた竪穴VI墓では、金製カップや金装飾の青銅製短剣や青銅製の両刃斧、つや消し様式のミケーネ陶器などの出土品がもたらされたが、ほかの竪穴I墓〜V墓のように、死者の顔を覆う金製マスクや胸当て、金製王冠などは出土していない。死者の顔を覆う金製マスク(Gold Death Mask)と胸当てGold Breast-plateに関しては、円形墳墓A・竪穴IV墓とV墓からのみから出土している。


II-3-01 金製マスク

          ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、金製デスマスク 「アガメムノンの金製マスク」

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴V墓
表現:死者の顔を覆うデスマスク/打出し加工
・1976年・シュリーマン提唱=紀元前13世紀・《アガメムノンの金製マスクGold Mask of Agamemnon》
・研究者判断=“アガメムノン王” より300年以上古い時代の “王” の死者マスク
年代:LHI期・紀元前1550年
展示:NAM・登録番号624/H250mm・重さ168.5g
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
撮影:1987年


ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A/Grave Circle A

          ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓Aを囲む二重の石板サークル

遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓Aを囲む二重の石板サークル
状態:中央左=最大級竪穴IV墓・中央右=竪穴I墓
年代:MHIII期〜LHI期・紀元前1625年〜前1500年
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
撮影:1982年


II-4-08 金製ペンダント付き銀製ヘアピン

                   ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、金製ペンダントトップ付き銀製ヘアピン

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴III墓
表現:金製ペンダントトップ付き銀製ヘアピン/ミノア文明の女神・垂れ下がるヤシの枝葉 or パピルス花
ペンダント=クレタ島ミノア文明からの献上品?
年代:LHI期・紀元前1550年〜前1500年
展示:NAM・登録番号75/ペンダントトップW67mm・銀製ピン長さL215mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


III-08 銀製の浅カップ

          ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、銀製カップ 金装飾

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴V墓
表現:銀製の浅カップ/リングハンドル〜口縁部=金装飾・連鎖する渦巻き線(or 木の葉)紋様・点描
年代:LHI期・紀元前1550年頃
展示:NAM・登録番号786-787
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


IV 半貴石・ガラスペースト・青銅製 装飾品

ミケーネ宮殿区域と周辺の横穴墓群、地方の墳墓遺跡から出土した装身具のネックレースでは、金製のみならず半貴石であるカーネリアンやアメジスト、水晶、さらに琥珀などの豪華な作品のほか、ガラス粉の溶融・焼成で製作するガラスペーストや高温度焼成のファイアンス陶器のビーズを使った作品、そして美しい硬質石やテラコッタ製(素焼き粘土)のビーズを連ねたネックレースも見つかっている。


IV-03 カーネリアン・ネックレース

                 ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、カーネリアン製ネックレース

出土土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴II墓
表現:カーネリアン・ビーズのネックレース
年代:MHIII期・紀元前1600年〜前1550年
展示:NAM・登録番号110
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


 王や王族、貴族階級など高位身分の人達の青銅製の装飾短剣Decorated Daggerも数多く造られ、発掘では柄頭が金表装〜象牙や大理石の仕様、グリップハンドル〜ショルダー部が金表装&金製リベット固定、刀身にニエロ金属・金・エレクトラム合金を使った豪華な象嵌仕様の短剣も多数見つかっている。


V-05 象嵌装飾・青銅製の短剣

          ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、青銅製短剣 象嵌 ライオン・水鳥・魚

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴V墓
表現:分類=「Tang無・短剣」/刀身=金・ニエロ金属・エレクトラムの象嵌
ライオン二頭の水鳥襲撃・川と泳ぐ魚
年代:LHI期・紀元前1550年頃
展示:NAM・登録番号765/L165mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


 ミニュアン様式陶器は引き続き焼かれる中、後期ヘラディックLHI期・紀元前1550年頃から始まるミケーネ文明(時代)に入り、アルゴス地方を中心に海洋性デザイン様式Marine Design Styleや植物性デザイン様式Floral Design Styleなどクレタ島ミノア文明の影響を強く受けながら、自前のミケーネ陶器の生産は飛躍的に開花、また交易を通じてキクラデス文化からの特徴的な陶器なども輸入された。

 後期ヘラディックLHI期の器形では、中期ヘラディックMH期からの継承としてずんぐりとした水入れなど西洋ナシ形容の容器Piriform Wareを初め、扁平のアラバストロン型容器Alabastron、器形モデルとなったヴァフィオ型カップVaphio Style Cup、脚の太いゴブレット杯やウサギの耳のような競り上がったハンドル付きカンタロス型Kantharosなどが好まれた。

 絵柄のないミニュアン様式陶器のほか、後期ヘラディックLHI期の陶器の絵柄モチーフでは、ミノア文明の影響を受けたタコや渦巻き線紋様、オリーブを模したような連鎖の葉紋様、やや抽象的なデザインなどが主流となって来る。


VI-1-02 球形の水差し

              ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A、球形の水差し 渦巻き線紋様

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・円形墳墓A・竪穴II墓
表現:球形水差し/連鎖する渦巻き線紋様・横帯線の絵柄
年代:MHIII期・紀元前1625年〜前1550年
展示:NAM・登録番号200/H295mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


 後期ヘラディックLHIIIB期の陶器の絵柄デザインでは、最も顕著な陶器では、前期に発祥したピクトリアル(写実)様式の大型クラテール型容器が大量に生産され、国内向けの汎用品ではミケーネ宮殿〜南東5km、現在のプロシムナ村〜西方3kmのプロシムナ・ベルバチ居住地Prosymna-Berbatiを初め、中部地方のテーベThebes、一部ではミケーネなどでも焼成された。ただ、キプロス文明〜中東地域へ輸出する高級品に限っては、ミケーネ宮殿〜南南東15kmのティリンス宮殿の付属工房で限定生産された。

 ピクトリアル様式の絵柄では、ティリンス宮殿で焼かれた高級品には、輸出先の嗜好を反映したのか、点描の大柄な身体と小さめの頭部に大きな眼をした雄牛と細い脚で丸くつぶれたような鼻筋の男性達、あるいは雄牛と水鳥のコンビネーション絵柄などが描かれた。


VI-4-01 ピクトリアル様式・脚付きクラテール型容器

            ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡区域、ピクトリアル様式・脚付きのクラテール型容器

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・宮殿区域
表現:ピクトリアル様式・脚付きのクラテール型容器/巻き貝の絵柄
年代:LHIIIB1期・紀元前1300年〜前1250年
展示:NAM・登録番号1148/H370mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次
※本書の表紙画像


 ミケーネ文明の石製の印章に刻まれた絵柄モチーフは、その多くが紀元前1450年頃の「侵攻ミケーネ人」による文明破壊前のミノア文明からの輸入品であった可能性が濃厚である。そうであっても絵柄の嗜好からミケーネ社会と文化を反映している作品も多々確認できる。
 特にクノッソス宮殿が崩壊した紀元前1375年以降、クレタ島からの輸入が完全に途絶え、それ以降ミケーネ文明の独時製作となった石製の印章では、ミノア文明の表現モチーフに比べてややデフォルメ的な絵柄が増加傾向となり、一部では極端な表現も出現している。

 「好戦的なミケーネ人」を反映して、印章の絵柄モチーフでは人やライオンとの闘い、勇者たるライオン単体などが確認できるが、全般的には自然を尊んだミノア文明の穏やかなモチーフの継承・模倣が主流と言える。


IX-12 メノウ製の印章

            ミケーネ文明 ミケーネ宮殿遺跡区域・聖所、メノウ製の印章 「雄牛跳び」

出土遺跡:ミケーネ宮殿遺跡・宮殿区域・聖所・偶像の部屋
表現:円形レンズ形状・メノウ製の印章/雄牛跳び(雄牛二頭)・男性一人
年代:LHIIIB2期・紀元前1250年〜前1200年
展示:NFAM・登録番号69-813(現 MYAM・登録番号1861)/L22mm
現地:ペロポネソス・アルゴス地方
描画:大久保栄次


 希少価値が極めて高い象牙品では、地中海域の交易を通じてわずかに輸入できた量と象牙自体の物質的なサイズとからして、大型品の加工は難しく、また工芸加工のトレンドに至ることはなかった。
 出土例から言えば、多くは人と女神など人物像、「好戦的なミケーネ人」を象徴する男性兵士像、高貴な人達が使うことを許された彫刻仕様の櫛(くし)、家具調度品の表装用や部屋に飾る置物などに限定されている。


XII-02 象牙製の櫛(くし)

          ミケーネ文明 スパタ遺跡 象牙製の櫛(くし) スフィンクス絵柄

出土遺跡:スパタ遺跡・横穴墓
表現:象牙製の櫛(くし)/表裏面=スフィンクス・ロゼッタ紋様のレリーフ彫刻
年代:LHIIIB期・紀元前1300年〜前1200年
展示:NAM・登録番号2044/L160mm
現地:アッティカ地方
描画:大久保栄次
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