ホームページ ⇒ スペイン ⇒ トレド/セゴヴィア |
タホ川対岸〜トレド旧市街を展望/カスティーリア地方 |
● 融合文化の美しさ スペインの首都マドリッドから南西へ約70km、深く切り込まれ蛇行するタホ川 Tajo に囲まれ、天然の城塞のような佇まいを見せる古い街トレド Toledo は、7世紀〜400年間に渡ってイスラム勢力に支配された。その後、11世紀になってアルフォンスY世の指揮の下レコンキスタ運動(Reconquista 国土回復)としてキリスト教徒に奪還されるという複雑な歴史を秘めている。 このため、コルドバのメスキータ寺院やグラナダのアルハンブラ宮殿と同じく(下写真)、トレドの街はイスラム教とキリスト教文化が上手に混合された不思議な魅力に溢れている。トレドの旧市街全体がUNESCO世界遺産に登録されている。 アルハンブラ宮殿・ライオン中庭/美しく精緻なアラベスク装飾(ムカルナス装飾) 関連Webページ: 世界遺産・グラナダのアルハンブラ宮殿/コルドバのメスキータ寺院 ※ポプラ社発行書籍 世界の宗教シリーズ・「イスラム教」掲載写真に採用される/2005年03月 トレドの旧市街地には石畳の曲がりくねった狭い通りが網の目のように走り、13世紀建立のゴシック様式のトレド大聖堂を初め、古城アルカサールや12世紀〜15世紀頃の教会堂や修道院、あるいは16世紀後半からこのトレドの街に住んだ地中海クレタ島生まれの画家エル・グレコ El Greco の家など、数え切れない歴史的建造物がびっしりと並ぶ。 渓谷を形成するタホ川の対岸から眺めるトレド旧市街の絶景は、異なる宗教の遺産、融合文化の混沌とした独特な雰囲気を醸し出し、見飽きない美しさを提供している(トップ写真)。 スペイン中央部 地図/作図 legend ej ラ・マンチャ地方・風車のある町と村々/作図 legend ej コンスエグラ風車の丘&カンポ・デ・クリプターナの風車の丘 |
● 優美なアルカサール(城) セゴヴィア Segovia(セゴビア) は人口55,000人、首都マドリッドの北西約100kmにある中規模の町である。ローマ時代から繁栄してきたセゴヴィア市内に残る歴史的建造物は、UNESCO世界遺産に登録されている。 旧市街の北西端にあるセゴヴィアの古城アルカサール Alcazarは、12世紀以来、歴代の城主により繰り返し増改築が行なわれたスペインを代表する優美な城である。城の北翼部などは12世紀〜13世紀のロマネスク様式とゴシック様式を取り入れた仕様、また大広間は明らかにイスラム様式を採用している(下描画)。 世界遺産/堂々たる風格 セゴヴィア・アルカサール(城)/カスティーリア地方 描画=Web管理者legend ej そのほか、アルカサール城ではかなりの部分で簡素でありながら機能美を主張するシトー修道会の建築様式が多用されているが、明るい地に鮮やかな色彩の装飾ではイスラム様式が優先されている。 城は18世紀には牢獄として使用されたり、王室の砲兵学校が占有したり、19世紀には火災があり再建された後、今日では城内は博物館となり、20室ほどが一般公開されている。 城の周辺は起伏の丘、松林や豊かな平原が広がっている。セゴヴィアを訪ねた時、突然の雷雨があったが、直ぐに上がり、真っ青な夏の夏空に柔らかなコットンのような綿雲がゆったりと流れて行く。まるで絵に描かれたような中世スペインの「夢物語」を見ているような風景に心打たれる・・・ ------------------------------------------------------------------------ ● ローマ時代の水道橋 セゴヴィア市街の南西部のバスターミナルから旧市街地へ500mほど向かうと、最初に視界に入ってくるのがローマ時代の水道橋の雄姿であろう(下描画)。当然、この水道橋も世界遺産に含まれている。規模や損傷状況などから判断した場合、現在このセゴヴィアに残る水道橋が、ヨーロッパ全域で最も原形を保つローマ時代の水道橋と言われている。 セゴヴィアの水道橋は、紀元前1世紀、ローマ人が建造した。花崗岩の切石積み大型建造物の典型的な例と言われ、その規模は全長728m 最大高さは29m近い巨大さを誇る。ここでもローマ人は高いレベルの建築土木技術を発揮していた。 世界遺産/セゴヴィア・ローマ時代の水道橋/カスティーリア地方 描画=Web管理者legend ej また、ローマ時代の水道橋の残存遺構では、セゴヴィアの水道橋より一回り小規模だがスペイン・地中海沿岸タラゴナ〜北方3km郊外の世界遺産 ラス・ファレーラス水道橋(長さ217m 高さ27m 二層構造)がある。より大規模な水道橋では、全長275m、南フランスに残る世界遺産 ポン・デ・ガールが有名である(下描画)。 世界遺産/ローマ時代の水道橋 ポン・デュ・ガール/南フランス・ラングドック・ルシヨン地方 描画=Web管理者legend ej 関連Webページ:世界遺産/南フランスのアヴィニョン(アヴィニオン)とポン・デュ・ガール(水道橋) Amazonを利用する一番の理由=世界最大の「幅広い品揃え」
----------------------------------------------------------------------- ● 歴史あるセゴヴィア旧市街 セゴヴィア旧市街には、内部に18の礼拝室を備え一際高い鐘楼がシンボルとなっている16世紀のゴシック様式のセゴヴィア大聖堂があり、ほのほかでは周囲が若干込み入った場所に建つ13世紀ロマネスク様式の聖エステバン教会堂、11世紀の聖マルタン教会堂などもある。 旧市街の北側には、15世紀のエル・パラル修道院、さらに旧市街を網の目のように走る狭い通りも中世のままの姿を今に伝えている。これら旧市街と建造物も世界遺産の対象である。また7月〜9月には水道橋から1時間毎に発車する市内バス観光(所要1時間)が企画され、主要な観光ポイントを巡っている。 ----------------------------------------------------------------------- ● ベラ・クルス教会堂/笑顔のウェディングドレス セゴヴィア旧市街の北西端、アルカサールの展望台からの眺望は素晴らしい。なお「アルカサール」とはスペイン語で「城 Alcazar」を意味している。蛇行しながら徐々に登り勾配で北方の村へ延びる道路の右側には、ひっそりと建つベラ・クルス教会が建つのどかな風景が展開している。ベラ・クルス教会の建立起源は、明確に分かっていないが13世紀の初め1208年説が有力である。 殆ど装飾のないその建築は間違いなくロマネスク様式の集中式礼拝堂と分かる。天井は幾分イスラム風で壁画も残されている。アルカサールの展望台から遠目に眺めた時、円形に見える教会の外観だが、近づいて良く確認するとカーブを描き突き出たような礼拝室を備えた12角形である。入口をほぼ90度左へ回った所にも小さな出入口があり、その脇が鐘楼である。 スペインの夏、ある日の午後、短時間の雷雨が上がった後、結婚式を終えたと思しき緊張感の取れた新郎と白いウェディングドレス姿の新婦が、このベラ・クルス教会の前で記念写真を撮っていた。しばらくして、写真を撮り終えた美しい新婦は、近くで佇む私に彼女の人生の全ての幸福を表わすような笑みを投げかけた。そして、フルートの奏でる澄みきった軽やかな響きのビゼー作・≪アルルの女・第2組曲・3曲・メヌエット≫のように、幸運を運ぶ気持ちの良いカスティーリアの微風を受け、ウェディングドレスの裾をわずかに揺らしながら、手を取り合った新郎と共に静かに去って行った。 歴史ある小さなこのロマネスク様式の教会堂を背景として、結婚記念の写真を撮る新しいカップルに幸運が齎されることを祈りたい。ロマネスク様式の古い教会堂とセゴヴィアの人達が織り成す、何ともスペインらしい印象的で美しいシーンであった・・・ |