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真夏のガルデーナ峠(標高2,136m)から望むサッソルンゴ峰(標高3,179m)/ドロミテ山塊地方 |
● ガルデーナ峠からの展望 オシャレな高原リゾート・コルヴァラ村 Corvara と「ドロミテのリビエラ」と呼ばれるガルデーナ渓谷のセルヴァ村 Selva との中間、開放的で雄大な眺望が自慢のガルデーナ峠 Passo di Gardena は、標高2,136m である。 峠の南側にはドロマイト苦灰岩の荒々しくも広大なテーブル・マウンテンを形成するセーラ山系 Mt Sella の山々が連なり、峠の北側は中級クラスのスキーヤーには涙が流れるほど嬉しい斜度15度前後、ギャップのまったくない草原のロングスロープの山岳スキー・ゲレンデとなっている。しかもその長さは3km以上、これでもドロミテ山塊地方では極普通のスキースロープなのだ。 大きく構えるセーラ連山とスキー・ゲレンデの丁度中央のガルデーナの谷間には、ドロミテ山塊地方を代表する堂々とそそり上がる標高3,179mサッソルンゴ峰の雄姿が控える。真冬になれば、この一帯全面がサラサラのアスピリン・スノーで覆われ、男性的な露岩の峰々も白い化粧が施され優しく微笑みかけてくる。 今、真夏のドロミテ山塊の絵のように美しい景観を目の前にしている。このガルデーナ峠に立つと、抜けるような紺碧の青空、流れる白い雲、強い紫外線、ドロマイト/苦灰岩のグレーの岩肌と遠くに荒々しい山容の岩山、穏やかなカーブを描く草原と点在する森林、そして眩しい陽光など、この一帯には夏の高原に必要な全ての自然条件が、「これぞ!」とばかりに準備されていることに気づく。 圧倒される南側のセーラ連山と北側のギザギザのキレット山容をむき出したシルシュピツェン連山 Cirspitzen(Max グラン・シール Gran Cier 2,592m 下写真)とに挟まれたガルデーナ峠は、おそらくドロミテ山塊地方で最も展望が美しい場所の一つである。峠から360度どの方角を見ても、荒々しい山容と穏やかな草原など圧倒される大自然の光景が目の前に展開している。 ガルデーナ峠〜厳しいキレット山容のシルシュピツェン連山(標高2,592m)/ドロミテ山塊地方 峠(標高2,136m) レストランFRARA(手前・丘に半分隠れている)& Hotel Cir(中腹の白壁建物) 右方向:コルヴァラ〜コルチナ方面/左方向:ガルデーナ渓谷〜サッソ・ルンゴ峰〜セルヴァ方面 ドロミテ山塊地方/ガイスラー山系・セチューダ高原/ガルデーナ峠&渓谷・セーラ山系 シウージ高原・サッソルンゴ峰 作図=Web管理者legend ej |
● 整備されたハイク・ルート/無数に設定されたルート ドロミテ山塊地方では、無数にある何れのハイキング・ルートやトレッキング・トレイルでも、厳しい登りルートではゴンドラやスキーリフトなどが設備されており、整備された歩行ルートの標高差もあまりないので、天候さえ良ければ(夏場は雨がほとんど降らず晴天続きの天候)、距離の長い複数のルートの組合せも可能である。 しかも日本のようにルートが深い谷や木々に隠れ空も見えない環境とは異なり、ここドロミテ山塊ではどのルートも常に青い空と広大な風景が消えることはない。標高2,000m以上のルートなら針葉樹も少なくなり、何処でも見渡す限りの雄大な大自然との共存で、感動・感激の連続三十連発と言える。 本格的なカラフル・ヘルメット姿のアルピニストを除き、一般のスニーカー・ツーリストやトレッキング・レベルでは各自の体力にもよるが、登りをゴンドラやリストを使って標高を稼ぎ、下りルートを歩行するという「楽チン・トレッキング」が標準である。 日本のように汗を流して登りも下りも「根性」で歩行していたら、疲労も重なるし、無数に設けられた素晴らしいトレッキング・コースのほんの一部しか行くことができない。ここドロミテ山塊では日本的な「根性トレッキング」は脇に置いて、完備された機動力施設を活用するより効果的な「楽チン・トレッキング」を選択すべきである。それでも1週間程度の滞在では、ドロミテ山塊のほんの「触り」の部分しか見ることができないくらい、この山塊地方は余りに広いのである。 路線バス、リフトやゴンドラなどの安全な輸送施設をフルに使って、ドロミテ山塊の整備されたハイキング・ルートやトレッキング・トレイルを手軽に思う存分歩行できるように、現地のすべての関係機関はツーリストとアルピニスト向けに効果的で抜群の環境作りを行っているのである。 故に無数に設けられたリフトやゴンドラなどの移動施設に、スニーカー・ツーリストとアルピニストが一緒に搭乗する風景が、ここドロミテ山塊では何の違和感も覚えることはない。日本のように、特に山岳地帯の大自然は、完璧な装備と長年の経験ある限られた人だけが触れることができる、という特殊な感覚はここドロミテ山塊には成立しない。 若者達に混じり70代と思しきヨーロッパの年配のご婦人達が、華やかな絵柄のTシャツや赤や黄色のパーカーを羽織り、濃厚サングラス、ストックとトレッキング・シューズ姿で草原やガレ場などをトレイルしている光景は、真に健康的で美しいと感じる。 |
雲の流れる夏の空に突き立つトレ・チーメ峰の連山/ドロミテ山塊地方 写真左方・崩壊砂礫からの「南周回ルート101(枝)と下方からの「南周回ルート101」がラヴァレード峠で合流 峠付近に微細な点々に見える20人ほどのハイカーと比較する時、トレ・チーメ峰の巨大な山容に圧倒される 世界遺産/ドロミテ山塊トレ・チーメ峰とミズリーナ湖 トレ・チーメ峰周辺・トレッキング・ルート/作図=legend ej ※101 102 105・・・=トレッキング・ルート番号 |
● 明るい高原/お花畑 ガルデーナ渓谷の中心地・標高1,200mのオルテッセイ Ortisei から北東方向へ昇る大型ロープウェイは、中間駅で1回乗り継ぎ、20分ほどで一気に標高2,480mのセチューダ高原展望台 Seceda へ運んでくれる。 山頂駅/展望台とその周辺までなら、雪の冬を除き、天気が良ければスニーカーなど軽装でも十分である。ただし標高があり、夏でも気温は急激に下がるので、ハイカーやツーリストはウィンドブレーカーやレインウェアーなどを持参することを求められている。 この一帯は冬季には、セチューダ山頂駅/展望台から遥か下方のオルテッセイやサンタクリスティーナ村 St Cristina へロングラン滑降できる最高のスキーコースが設定される。一方春〜夏〜秋の季節には、牧草地は色々なレベルのトレッキング・トレイルとなり、点在するヒュッテを結び下方の村々へ延びる。ドロミテ山塊地方の高原は、一年中アウトドアーを愛する人々を惹きつけて止まない。 展望台の周辺から広がるセチューダ高原の斜面は、春〜初夏の頃には紫・赤・黄色など、全面が見事なお花畑と化すと言う。私が訪れたのは夏7月、すでにほとんどの花は終わりを告げていたが、まだ一部に黄色系の小花が高原の優しい風に揺れていた。 |
セチューダ高原からグラン・フェルメーダ峰と3,000級ガイスラー山系を望む/ドロミテ山塊地方 |
標高2,480mのロープウェイ山頂駅/展望台の東方2.5km、見渡す限りの斜面草原の先には、不規則に刃こぼれしたノコ歯のような標高2,873mのグラン・フェルメーダ峰 Mt. Gran Fermeda が、最も高い峰が標高3,025mのリガイス峰 Sass Rigais 、その背後には2,600m〜2,900m級のガイスラー(オードレ)山系 Geisler Gruppe/Odle Gruppo の峰々が堂々と控えている(上写真)。 夏のセチューダ高原から360度どの方角を見ても、その風景はあまりに美しく雄大な世界だ。一方で花咲く緑の草原の優しさがあり、それに相反するかの如く浸食ドロマイト岩で形成される荒々しい岩山群が背後に控え、何の不思議さをも感じずに、二つ要素が見事に共存しているドロミテ山塊の典型的な風景である。これはスイス・アルプスでは有り得ない大自然の脅威というかご褒美の光景だ。 ● フネスの谷 ギザギザ稜線を描く険しいガイスラー山系の向こう側(北側)には、完全装備のクライマーだけに近づくことが許される崩壊の深い崖が刻まれている。さらに標高を下げれば、針葉樹林帯と穏やかな牧草地に囲まれたフネス渓谷 Funes の高原の村、ドロミテ山塊で「最も美しい風景」を提供すると言われている標高1,300mのサンタマダレーナ村 St Maddalena へ至る。 サンタマダレーナ村から幾らかの民家と村の聖マダレーナ教会堂を、あるいは草原に佇む聖ヨハネ礼拝堂を手前に入れて望む山岳風景は、ヨーロッパ輸入のカレンダーで必ず使われる「美しい定番フレーム」の一つになっている。 ヨーロッパの美しい風景の「定番」・初秋のサンタマッダレーナ村~冠雪のガイスラー山系 描画=Web管理者legend ej ● サッソルンゴ峰の展望 夏7月、まだ幾らかの高山植物の花が咲き残っているセチューダ高原からガルデーナ渓谷を挟んで、遠く8km先の標高3,179mのサッソルンゴ峰が手に取るように眺められる。空気が澄み渡り、可憐な花を付けた無数の高山植物を揺らす乾いた夏の微風が気持ちが良い。日常社会に疲れた心と身体の中まで洗われるような感じだ。 ガルデーナ渓谷の中心オルテッセイからロープウェイで登る標高2,000mのズイザー・アルム Seiser Alm(シウージ高原)や雄大なガルデーナ峠から眺めるのとは異なり、ここセチューダ高原から眺めるドロミテ山塊の雄サッソルンゴ峰の山容は、ウシ科に分類されている大型ヤギのジャコウウシとか、「たてがみ」の雄ライオンなど、何か大型動物がどっかりと膝を付いて休んでいるような貫禄の雰囲気がある。それにしても何とも雄大過ぎる絶景である。 |