legend ej の心に刻む遥かなる「時」と「情景」

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世界遺産/ドロミテ山塊 トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰 Mt. Tre-Cime di Lavaredo

高原に佇む美しいミズリーナ湖 Misurina Lake

UWH

ドロミテ山塊 トレ・チーメ峰 Tre-Cime/(C)legend ej
                ラヴァレード峠(鞍部)から望む標高2,999m トレ・チーメ峰
                中央峰・「グランデ」の高さ500mの垂直壁/ドロミテ山塊地方

雄大なトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰

圧倒される垂直山容
かつて1956年に冬季オリンピックが開催され、世界的にその名が知られた高原のリゾート、UNESCO世界遺産・ドロミテ山塊の「黄金盆地」とも呼ばれるコルチナ・ダンペッツォ Cortina d'Ampezzo、あるいは鉄道駅のある北方のドッビアーコ Dobbiaco からやって来る路線バスが、レストハウス・ヒュッテ・アウロンツォ(Rifugio Auronzo 標高2,300m)まで一気に昇ってくれる。
コルチナ・ダンペッツォからヒュッテ・アウロンツォまで道路で約18kmほど。なお、ヒュッテ・アウロンツォは25部屋100人以上が宿泊でき、アウロンツォ一帯のトレッキングのルート基地でもあり、食事やカフェ、サンドイッチや水ボトル、トレッキング用品なども購入できる。

ヒュッテ・アウロンツォから標高2,999mトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰 Mt Tre-Cime di Lavaredo へ向かう。連山峰の南側を半周するほぼ平坦でトラバース的な南周回ルート101をゆっくり40分ほど歩くと、右前方にヘリコプターの発着基地でもある歴史あるヒュッテ・ラヴァレード(Rifugio Lavaredo 標高2,350m)が見えてくる。
ヒュッテ・アウロンツォからの平坦な南周回ルート101は、ヒュッテ・ラヴァレード付近からちょっとだけ傾斜となる。ルートに従って200mほど15分だけ頑張って登れば(70歳でも大丈夫!)、標高2,450m、広い鞍部でもあるラヴァレード峠 Passo Lavaredo に到着できる。バス発着のヒュッテ・アウロンツォ〜ラヴァレード峠まで約2.5km、中高年の人でもおおむね所要45分〜1時間である。
また、ヒュッテ・ラヴァレード前から崩壊砂礫を直線的に登る若干傾斜がきつい「ルート101(枝)」もあるが、ラヴァレード峠でルート101と合流する(下写真)。

良く整備されたこの南側回周ルート101の途中では、トレ・チーメ峰のピークをはっきりと認識できないが、ラヴァレード峠(鞍部)に立って初めて三つに分離したピークを斜め北面から眺めることができる。トップ写真と下写真はラヴァレード峠(鞍部)から眺めた世界遺産トレ・チーメ峰の圧倒される絶景である。
自然が作った芸術的とも言える造形の美しさと異様さをむき出しているトレ・チーメ・ディ・ラヴァレーロ峰の「トレ」は、イタリア語で数字の「3」を意味する通り、山全体が見事に大きく三つに割れている。中央の「グランデ」が最高峰2,999m、一枚岩のように見えるその垂直面は玄武岩のような硬度のある岩石ではなく、ボロボロと崩れやすい岩質の約500mの絶壁である。

「500mの絶壁」とは、建物なら優に150階建て以上に相当、約300mの横浜ランドマークタワーの約1.5倍以上、240mの東京都庁舎の2倍の高さ、さらに458mの東京スカイツリー・第二展望台より高い。ラヴァレード峠付近に微細点に見える20人ほどのハイカーと比較するなら、その途轍もないスケール感が理解できるであろう(下写真)。
上写真と下写真はいずれも「広角レンズ」で撮影しているので、トレ・チーメ峰の山容がかなり縮小サイズで画面に収まっている。しかし標準レンズでは山容全体を画面に収めることは難易で、現実にラヴァレード峠から見上げるトレ・チーメ峰の山体は、岩の絶壁というよりSF映画の超巨大な物体のように見える。

          ドロミテ山塊 トレ・チーメ峰 Tre-Cime/(C)legend ej
 世界遺産・雲の流れる夏の空に突き立つトレ・チーメ峰の連山/ドロミテ山塊地方
 写真左方・崩壊砂礫からの「南周回ルート101(枝)と下方からの「南周回ルート101」がラヴァレード峠で合流
 峠付近に微細な点々に見える20人ほどのハイカーと比較する時、トレ・チーメ峰の巨大な山容に圧倒される


今にも崩れそうだが崩れないその裸身と言うか、圧倒されるドロマイト/苦灰石(後述)の無垢の岩肌をさらけ出すトレ・チーメ峰周辺には、無数に見られる色とりどりの小さな高山植物(下写真)以外に、殆ど草木がかくにんできない山岳風景が広がり、正に雄大な光景そのものだ。

ドロミテ山塊・高山植物/(C)legend ej
ヒメイトシャジン Campanulla Scheuchzeri    ユキノシタ属サクシフラガ・ブリオイデス Sasxifraga Bryoides
ドロミテ山塊地方                       ドロミテ山塊地方

ドロミテ山塊(東部)コルチナ&周辺山岳地帯 Dolomites Map/(C)legend ej
              ドロミテ山塊地方(東部)コルチナ・ダンペッツォ&周辺の山岳地帯
              作図=Web管理者legend ej

ドロミテ山塊のハイク&トレッキング

整備された無数のルート
夏の時期、天候さえ良ければ、広いパーキング場もあるヒュッテ・アウロンツォからラヴァレード峠(鞍部)までなら、年齢を問わず自分で歩行さえできれば、誰でもスニーカーなど簡易的な装備で訪れることが可能である。
また、ヒュッテ・アウロンツォからラヴァレード峠(鞍部)への南周回コース101は、最後の峠への登り200mを除きほぼ平坦、整備が行き届いていることから、トレッキングやハイカーのみならず、マウンテンバイクの元気な若者達、ベビーカーを押す若い母親や結構年配のご婦人のハイカーをたくさん見ることができる。

 トレ・チーメ峰周辺 トレッキング・ルート Tre-Cime/(C)legend ej
                 トレ・チーメ峰周辺・トレッキング・ルート/作図=legend ej
                 ※101 102 105・・・=トレッキング・ルート番号

ほとんどのハイカーが選択するトレ・チーメ峰への南周回ルート101のほか、例えばラヴァレード峠〜ヒュッテ・アウロンツォ(バス終点)までの帰路に別ルートを選択するなら、連山の北側に展開する広大な岩盤平原を大きく北周回するコースもある。この北周回ルート101〜105は南周回ルート101より「約3倍の距離」と若干起伏もあり、時間を必要とする。
ただし、周囲の視界は「絶景」だけ、初級トレッキング・ハイカー以上の人にはお勧めコースである。当然、バス終点から直接北周回ルート105〜101を使って、トレ・チーメ連山を右手に見ながら、右回りでラヴァレード峠へ向かうこともできる。この整備されたトレッキング&ハイキング・ルートは、雄大なガイスラー山系と広大な斜面の対比に特徴されるセチューダ高原(下写真)など、ドロミテ山塊地方の全てのエリアに行き届いている。

注意すべきは、晴天が続く清々しいドロミテ山塊の真夏とは言え、標高2,500mの高原〜山岳地帯、万一の雷雨など天候急変と気温低下に備え、レインウェアーやウィンドブレーカー、アウロンツォ・ヒュッテでもゲットできる軽食と水は携帯必需品である。
狭い経験論だが、トレ・チーメ峰を訪れた数日後、ノコ歯のようにゴツゴツとした山容を誇るクリスターロ峰の中腹ではたった30分間で快晴から真っ暗な空へと激変してしまい、直径3cm大の雹(ひょう)混じりのもの凄い風と雷雨を経験した。

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フレスコ画《受胎告知》   フレスコ画《受胎告知》      

ドロミテ山塊・セチューダ高原&ガイスラー山系/(C)legend ej
        セチューダ高原からグラン・フェルメーダ峰と3,000級ガイスラー山系を望む/ドロミテ山塊地方
         世界遺産/ドロミテ山塊ガルデーナ峠とサッソルンゴ峰/シウージ高原/セチューダ高原

ドロミテ山塊・ガルデーナ峠 Passo di Gardena〜グラン・シール連山 Grand Cier/(C)legend ej
       ガルデーナ峠〜厳しいキレット山容のシルシュピツェン連山(標高2,592m)/ドロミテ山塊地方
        峠(標高2,136m): レストランFRARA(手前)&Hotel Cir(遠方白壁)

 ドロミテ山塊 地図/ガイスラー山系・セチューダ高原・ガルデーナ渓谷・サッソルンゴ峰 Dolomites-Geisler-Seceda-Gardena-Sassolungo/(C)legend ej
     ガイスラー山系・セチューダ高原/ガルデーナ峠&渓谷・セーラ山系/シウージ高原・サッソルンゴ峰
     ドロミテ山塊地方/作図=Web管理者legend ej

ドロミテ山塊・ポルドイ峠 Pordoi Pass, Dolomites/(C)legend ej
          標高2,239mのポルドイ峠〜セーラ山系・南山腹/ドロミテ山塊地方
          ロープウェイ山頂駅(ヒュッテ・マリア)標高2,950m
          描画=Web管理者legend ej
           世界遺産/ドロミテ山塊ガルデーナ峠とサッソルンゴ峰/シウージ高原/セチューダ高原

Ref.
雄大なドロミテ山塊の山々
針葉樹の森林帯が消える標高2,000m前後で不意に現れる荒々しくも堂々たる岩肌むき出しのドロミテ山塊の山岳風景は、予告なしの突然変異とも言える「魔法の演出」である。世界で最も歴史的な遺産が多いローマやフィレンツェなど、都市部とはまったく異なるイタリアの「別な顔」が、ここドロミテ山塊に潜んでいる。
ヨーロッパでは華やかなスイス・アルプスの影に隠れてしまい、日本人にはあまり知られていないが、世界遺産となった真夏の時期のドロミテ山塊の最大の特徴は、ドロマイト(苦灰石)地質の男性的な絶壁と荒々しい岩肌、それらに対照するかの如く展開する女性的な穏やかにして広大な草原、そして所々に点在する残雪と一面に広がる美しい高山植物の群生などの多様性にある。
この厳しさと相反する穏やかさの共存と組み合わせこそが、ほかの地域ではあり得ない大自然のダイナミックで独特な景観をつくり出し、しかも、誰でも容易にそれに触れることができるという不思議な舞台を提供しているのが、ここ北イタリアのドロミテ山塊地方なのだ。


ドロミテ山塊/ドロマイト地層
ドロミテ山塊一帯の「ドロマイト/苦灰石」と呼ばれる石灰岩系の岩石、この聞きなれない鉱物名は、石灰岩の主成分である炭酸カルシウム分がマグネシウム化されて生成されたもの。普通の石灰岩は成分の95%が炭酸カルシウムで、残りが炭酸マグネシウムとされ、一方ドロマイト/苦灰石は炭酸マグネシウムの含有量が最大45%にもなるとされる。
ほとんど炭酸カルシウムである石灰岩は酸性に弱く、二酸化炭素を含む雨水に触れると溶け出し、時折鍾乳洞をつくることがあるが、同じ石灰岩質であるドロマイト/苦灰石は炭酸カルシウムの含有量が少ないために、雨水による侵食を受け難い。このため、ドロミテ山塊では鍾乳洞はなく、年月の経過による自然崩壊だけが起こり、ゴツゴツとした異様とも言える独特な景観を呈している。
なお、ドロミテ、あるいは地元イタリア語で言うドロミーティは、ドロマイト/苦灰石を発見したフランス人地質学者ドロミューに由来する。


ドロマイトの地質/ドロミテ山塊と南アフリカとの比較

南アフリカ・スタークフォンテン洞窟・鍾乳石・「像の鼻」/(C)legend ej ドロマイト系地質ではUNESCO世界遺産である「人類発祥の地」
 である南アフリカ・ヨハネスブルグ近郊の「スタークフォンテン洞窟
 (左写真)」のマルマニ・ドロマイト地質が有名である。

 スタークフォンテン洞窟は南アフリカの典型的な鍾乳洞の一つで、内
 部から350万年前の猿人アウストラロピテクスの頭蓋骨や足骨化石
 ・「Little Foot」が発掘されている。
 この洞窟の周辺一帯はドロミテ山塊地方とは異なり、炭酸カルシウ
 ム分を多く含んだマルマニ・ドロマイト地質で形成されていることから、
 弱酸性の水の浸食を受けやすく、結果、鍾乳洞が形成されやすい。



 スタークフォンテンン洞窟/「ゾウの鼻」鍾乳石/ヨハネスブルグ近郊





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ドロミテ山塊・ミズリーナ湖/(C)legend ej
        3,000m級のソラピッス山系の山々を映す標高1,754m ミズリーナ湖/ドロミテ山塊地方

美しきミズリーナ湖

青き水を湛えた湖
ドロミテ山塊の東部地区の中心、コルチナ・ダンペッツォから路線バスルート・国道487号でトレ・チーメ峰へ向かう途中、コルチナの街から北東へ向かい、標高1,809mのトレ・クローチ峠 Passo Tre Croci を越えると、ほぼトラバース的な山岳道路となり、さらに進むと展望が一気に開け、標高1,754mの高原に佇む美しいミズリーナ湖 Lago di Misurina(上写真)となる。
通常、コルチナ・ダンペッツォに滞在して路線バスを使うツーリストでは、ミズリーナ湖とここから比較的近い距離のトレ・チーメ峰へのハイキングを「1日行程」のプランにする人が多い。特に昼間の長い夏季なら、路線バスのタイムテーブルに注意すれば、時間的にも内容的にも十分満足できる1日行程であろう。

高原のミズリーナ湖の幅は最大で200mほど、南北に約1kmと細長く、氷河から流れ出た澄み切った水を満々と湛えている。針葉樹の原生林も含め、湖の周囲には標高差のない平坦な散策ルートが設けられ、ほぼ1時間で一周できる。
歩きながら、湖面に写る堂々たる標高3,205m ソラピッス峰 Mt Sorapiss を初め、ノコ歯のように険しく尖ったドロマイト/苦灰岩がむき出しの3,221m クリスターロ峰 Mt Cristallo(上写真)、三峰の名山の2,999m トレ・チーメ峰 Mt Tre Cime di Lavaredo など、ドロミテ山塊を代表する高い峰々を手に取るように眺められる。

湖畔には幾らかのホテルと花を飾ったアルプス風のきれいなペンション、レストランやカフェが点在する。夏の時期、健康志向のヨーロッパのツーリストで賑わうコルチナ・ダンペッツォの街からも幾分離れた位置にあり、アクセスも良く、汚れのない空気、どこを見ても美し過ぎるほどの大自然に囲まれたミズリーナ湖畔での長期滞在は、心のリフレッシュメントと満足感を与え、ツーリストの期待を裏切ることはないであろう。

また、イタリア Blu Hotels 系列の「☆☆☆☆Grand Hotel Misurina」の建つミズリーナ湖の北側湖畔から眺め、波のない鏡面の静かな湖面に南対岸に建つ六階建ての黄色の「旧Grand Hotel Savoia(旧サヴォイア家・夏の離宮)」を映し、遠方にソラピッス連山を入れる雄大なシーンは、人々に良く語られる「生涯に一度は訪ねたい場所」として世界中に知られている。

サンタマッダレーナ村 Santa Maddalena/(C)legend ej
         ヨーロッパの美しい風景の「定番」・初秋のサンタマッダレーナ村~冠雪のガイスラー山系
         描画=Web管理者legend ej
          世界遺産/ドロミテ山塊ガルデーナ峠とサッソルンゴ峰/シウージ高原/セチューダ高原

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