legend ej の心に刻む遥かなる「時」と「情景」

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「アフリカ大陸で最も美しい街」 ケープタウン Cape-Tow

ケープ半島自然保護区/喜望&ケープ岬 Cape of Good Hope&Cape Point

UWH

ケープタウン Cape Town/(C)legend ej
            標高1,000mテーブルマウンテン山頂からケープタウン市街の展望
              尖り山 Lion's Head/低い丘 Signal Hill
              丘を越えた海岸沿い Water Front 地区
              右手 Old Town 地区

「アフリカ大陸で最も美しい街」 ケープタウン

美しい街並みと海と山
今や「アフリカで最も美しい街」と呼ばれるアフリカ南端のケープタウン Cape Town は、17世紀の半ばにオランダの東インド会社の船舶の補給基地として開発された。それ以降アフリカ南回りの船の寄港とともに発展を続け、さらに19世紀の初めからはイギリスの統治を受けた経緯も大きく影響して、ヨーロッパの街を連想させる落ち着いた高貴な雰囲気が漂う街となっている。
今日人口では最大都市ヨハネスブルグやインド洋沿岸のダーバンにその座を譲ったが、ケープタウンは歴史的な背景のみならず、治安面の良さも含め、市街や港の美しさや近郊に広がる比類なき自然の豊かさなどの観光面を意識する時、あらゆる分野で南アフリカの最も魅力ある街の条件を備えている。

ケープタウンの海岸沿いに「ウォーターフロント」と呼ばれる地区がある。美しい港やホテル、コロニアル風の豪奢な住宅、ハイセンスなショッピングセンターなどが建ち並んでいる。一方、市民が暮らす升目状に区画された市街の直ぐ後方には、平坦な頂上面をもつ標高1.087mのテーブルマウンテンがそそり立ち、その麓の海岸近くにはピラミッドに似た標高700mの飛び抜けて目立つライオンズヘッドの丘どっかりと佇む(トップ写真)。
この街を訪れる多くのツーリストが憧れて止まないテーブルマウンテンへは、市街南部の麓から10分ごとに運行される円形のロープウェイで登ることができる。大型ゴンドラは色々な方角の風景を見せるためか、室内の床面がゆっくりと回転しながら昇って行く珍しいタイプである。

ケープタウンのテーブルマウンテンは都市の直ぐ裏手にあるという、地理的にも稀な山岳である。海からの湿った気流が断崖絶壁でそそり立つテーブルマウンテンに当たり、一気に標高1,000mまで強風の如く急上昇して冷やされる。直下に海があることから頂上付近は結構霧に覆われる日が多い。
しかし、晴天時(上写真)や霧が切れた時、標高1,000mのテーブルマウンテン山頂から眺める眼下のケープタウンの市街を初め、大西洋岸のビーチ、おもちゃの家のようなカラフルなコテージが建ち並ぶ西海岸の風景は本当に美しい。さらに最近ではツーリストのために、操縦士同乗のモーターグライダーを使った天空からのケープタウン観光もできるようになってきた。

市街に囲まれているシグナルヒルから眺める夕刻〜夜間の眺望は正に絶景と言える(下写真)。
シグナルヒルは標高350mと決して高くはないが、なだらかな丘の頂上パーキングまで車で行けることから、ケープタウン市民の憩いの展望台としても人気があり、南隣のライオンズヘッドの丘やテーブルマウンテンの全容を間近に眺められる場所としても知られている。

南アフリカ・ケープタウン夜景 Cape Town/C)legend ej
       シグナルヒルから望むケープタウンの夜景/旧市街(手前)〜港湾地区〜新市街(遠方)


ケープタウン旧市街を独り歩く
経験論に限ればだが、大都市ヨハネスブルグに比べ、ケープタウン市内は比較的治安も良いと感じる。昼間だけでなく夕方も含め、人々が集まるバスターミナルや市場、裏通りまで単独で歩いて回ったが、特に「危険」と感じることはなかった。ただこの感覚も、私がこの時たまたま幸運であっただけかもしれないが、そうであっても少なくとも大都市ヨハネスブルグの中心部に漂っている明確な危険性や異様な空気とはちょっと違うことは事実である。
広場などの出店のオーナーのオジサンやオバサン達も明るく、ケープタウンには南アフリカで最も早く開発された歴史があり、国際ツーリストに対して市民が慣れていることも背景にあるのか、トラブルが起りそうな雰囲気はあまり無いように判断できたが、あくまでも私には・・・

ただし、この私の治安とセキュリティの評価は、あくまでも1972年以来、海外滞在日数が累計で1,200日、世界1,250か所の町や村々を回った個人的な経験からの感触であり、在南アフリカ・日本大使館の注意勧告の通り、ヨハネスブルグと同様に、ケープタウンでも人々の大勢集まる市場や交通ターミナル、当然裏通りなどへの夕方や夜間の接近は、たとえ数人のグループであっても控えた方が賢明であろう。

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沖合い10km ロベン島
ケープタウンから北方へボートで30分、10km少々の海上に浮かぶロベン島 Robben Island は、17世紀〜20世紀の間に刑務所、病院、軍事基地などに利用された場所である。特に人種隔離政策アパルトヘイトの時代、その後に大統領となるN.マンデラ氏が収監された刑務所としても有名、現在、刑務所を含むロベン島全体が博物館となり、UNESCO世界遺産の登録を受けている。なお、島の見学は単独ではできず、「ウォーターフロント」から出航するボートの乗船を含め、ガイド引率のツアー形式となっている。

ケープタウン・ウォーターフロント〜(ドライブルート)〜ケープ半島

ケープ半島周遊ルート=美しいビーチの連続/「12使徒の山々」/オットセイ生息ドイカー島
ケープタウンからケープ半島を貫くように、南方へ60km〜70kmほど延びる道路は格好の観光ドライブルートと言える。また、テーブルマウンテン山脈の全域とケープ半島の一部は、テーブルマウンテン国立公園 Table-Mountain NP として指定され、同時にUNESCO世界遺産としての登録(ケープ植物保護区域)も受けている。

大西洋に面する半島の西側、ピラミット型のライオンズヘッド丘の西側には、世界で最も美しいドライブウェイの一つであるビクトリア・ロードが美しい海岸にそって走っている。ケープタウンに最も近いバントリィベイ Bantry Bay、テーブルマウンテンの高さ1,000mの東崖下には真っ白なクリフトンビーチ Clifton Beach とキャンプスベイ Camps Bay が続き、高級ホテルやコテージや白を基調とした明るい色彩の上品なレストランやカフェテリアが建ち並ぶ。

特にキャンプスベイから眺める「真上」の標高1,000mのテーブルマウンテンはゴツゴツとした形容で、人はそれをイエスの弟子達から引用した「12使徒 Twelve Apostlos の山々」と呼び、ビクトリア・ロード沿いにはその名を付けた「The Twelve Apostlos Hotel」という高級ホテルもある。夕暮れにここから眺めるピラミットのライオンズヘッドの美しいシルエットは、見たこともない絶景を提供してくれる。

さらに、美しいビクトリア・ロードを南下すれば、西側の断崖の岩山を仰ぐように佇む小さな湾にビーチと港のあるハウトベイ Hout Bay に出る。ここはシーフードの料理でも有名となっている。ハウト港からの観光クルーズ船で沖合いのドイカー島 Duiker Island へ向かえば、島に上陸することはできないが、生息数4,000頭以上とされるケープファ・オットセイの群れを見ることができる。なお、ハウトベイの山際には鳥類をメインとする動物の飼育公園もある。

           南アフリカ・ケープタウン周辺 Map, Cape Town/(C)legend ej
         ケープタウン〜ケープ半島〜南アフリカ・ワインランド周辺/作図=Web管理者legend ej

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チャップマンズ・ピーク道路/海軍港・サイモンズタウン/ペンギンのボルダーズビーチ
ハウトベイからの道路は見晴らしの良い崖上パーキングを通り過ぎ、眼下に真っ青な美しいチャップマンズベイ Chapman's Bay を眺めながら、絶壁に沿って蛇行を繰り返す距離10kmのチャップマンズ・ピーク・ドライブウェイ Chapman's Peak D-Way を一気に海抜600mまで登る。

峠を抜けると、大西洋から吹く強い西風の影響を受けないケープ半島の東海岸へ駆け降りる。そこは穏やかなフォルス湾 False Bay が広がり、白いコロニアル風の美しい家々と海軍の艦艇が停泊する要衝サイモンズタウン Simon's Town(下写真)である。
17世紀からの歴史あるサイモンズタウンの美しい街並みを過ぎると、丸みのある巨大な花崗岩の間に真っ白な砂浜が広がるボルダーズビーチ Boulder's Beach となる。

ビーチは小形のケープペンギンの生息地で、パーキング場から丁寧に造られた木製遊歩道を静かに浜辺まで歩くと、数えきれない可愛いペンギン達(約3,000羽/下写真)が鳴き声を上げながら砂浜をヨチヨチと歩いたり、砂穴にうずくまったり、岩盤でのんびり群れている姿を見ることができる。

      南アフリカ・ペンギン浜&サイモンズタウンの海/(C)legend ej
              小奇麗な町サイモンズタウン&可愛いケープペンギン達/ボルダーズビーチ


ホェール(鯨)ウォッチング/美味しい海鮮ディッシュ/山盛りのムール貝/小奇麗なフィッシュホーク
6月〜11月頃、サイモンズタウンのフォルス湾には、成体で体長15m以上にも成長するというミナミセミクジラやザトウクジラなどが姿を現す。特に確認数が多いミナミセミクジラは歯を持たず、「鯨ヒゲ」という大型の刷毛のような器官が上顎から伸び、これがフィルターの役目となってろ過摂食を行う種で、南半球のアフリカ南部、南米の南端、オーストラリア南部の南極大陸に近い海域に生息している中型クジラと言う。
シーズンにはボートによる色々なホェールウォッチングも企画され、運が良ければ、経験論だが、2013年の春(現地・秋)、岸から50mほどに2頭のクジラの姿を目視できた。なお、クジラ情報はサイモンズタウン観光URLで参照できる。

このほかケープ半島の東海岸沿いには、フィッシュホーク Fish Hoek やコークベイ Kalk Bay など、ビーチと小さなリゾート村が連続している。フォルス湾沿いはムール貝の有名な産地で、美味しい海鮮ディッシュをサーブする明るい雰囲気のレストランが軒を連ねる。経験論だが、ムール貝を一皿オーダーしたら、直径50cmの大皿に超山盛りで出てきたのには驚きである。

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カーステンボッシュ植物園
ケープタウンのテーブルマウンテン山系の内陸部には複数の貯水池があり、リースビーク川 Liesbeek R が麓に流れ出ている。山系の東側、リースビーク川の畔にはケープ植物系9,000種の植物を育てている国立カーステンボッシュ植物園 Kirstenbosch National Botanical Gardens がある。
ここは植物園としては世界で初めてUNESCOの世界遺産の登録を受けている。植物園は528haという広大な面積を占め、日本からの南部アフリカ周遊ツアーのほとんどがこの植物園をコースに設定している。

テーブル・マウンテン/ケープ植物保護区

テーブルマウンテン/ケープ植物保護区
テーブルマウンテンに関しては、ケープタウンで望むテーブルマウンテンは余りに有名であるが、高速道路N7号を300kmほど北上した乾燥の大平原の町ファンリンスドルフ Vanrhynsdorp から眺めるマッシカマ山系 Mts Massikama のテーブルマウンテンの方が遥かに美しい山容をしている、個人的には思う。
マッシカマ山はケープタウンのテーブルマウンテンと同じく標高1,000mであるが、周囲に遮るものがまったくないというフィンリンス大平原から直にそそり立っているため、その安定した雄大さは他の追随を許さない光景と言える。

UNESCOはケープタウンから北方へ約230kmの内陸の町クランウィリアム Clanwiliam に始まり、南海岸の東ケープ州ポート・エリザベス Port Elizabeth に至る広大な地域の中で、ケープタウン地域やケープ半島、さらにはボーランド山地、デ・ホープ自然保護区やブース・マンボス自然保護区、スワートバーグ山脈など、合計8か所をケープ植物保護区域 Cape Floral Region Protected Areas として世界遺産に登録している。この区域は世界で最も植物群に富んでいる区域と言われている。

これらの区域は南アフリカの南部を東西に約800kmと非常に長く占める区域で、7区分された南アフリカの植生バイオームではフィンボス帯 Fynbos と呼ばれ、年間500mm前後の降水量のもとで約9,000種もの植物が生育しており、その半数がこのケープ植物保護区域の固有種であることは驚きに値する。
また、この指定された自然保護区は、各々遠く離れて点在しているが、区域を合計した全体の面積は5,530Kuで、日本の愛知県より広い区域である。海岸に近いケープタウン地域やデ・ホープ自然保護区などを除き、多くの保護区域は海岸から100km〜200kmの内陸部にあるが、保護区は海洋を含む植物全体の生態と保護をメイン課題としている。

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ケープタウンの定番/ケープ半島ドライブツアー
ケープタウンからケープ半島へは自家用車は無論のこと、レンタカーを使ったり、あるいはホテルや旅行代理店を通じて申し込む「半日ツアー」や「1日ツアー」などで、誰でも問題なく訪れることができる。半日ツアーや1日ツアーなど、通常ボックスタイプの車両を使ったケープ半島ツアーは色々な旅行社が企画して、訪れる場所や回るコース、料金もそれぞれ異なるので申込時に内容を確認する必要がある。
便利な申込方法としては、ツアー企画と提携しているホテルのフロントマネージャーを通じて申し込みを行うと、ツアー車両が指定時間に複数のホテルを回って、ツーリストをピックアップして出発してくれる。1台の車両で即席のグループツアーを形成する方法で、一般的にドライバー兼任のガイドは誠実で説明も丁寧である。ただケープ地方の自然や街の歴史や生活などの説明は英語がメインとなる。

南アフリカ・ワインランド

南アフリカ・ワイン産地/「黄金の三角地帯」
ケープタウンは南アフリカで最も古い街で、その次の歴史ある町ではケープタウンから東方へ約25kmにある「南アフリカ・ワインランド」と呼ばれる町とも言われている。
地質的にも恵まれ、良質な水があり、温暖な地中海式気候帯である南アフリカ・ワインランドでは、17世紀にケープタウンが開発されると、10年も満たないうちにワイン造りがスタートした。その後ヨーロッパの「宗教戦争」の影響から、特に国を追われたフランスのユグノー派(プロテスタント派)の人達により、さらにブドウ栽培とワイン生産が発展向上したとされる。

17世紀のヨーロッパ宗教戦争とフランスから国を追われるユグノー派の修道士達に関する情報:
シトー修道会・「プロヴァンス三姉妹」のラベンダーの花咲くセナンク修道院

ワイン産地特有の波打つような丘陵地帯にあるステレンボッシュ Stelenboch 、その周辺のパール Paarl やフランス・ユグノー派開墾地のフランシュフック Franschhoek など、ステレンボッシュ平原と谷間にある合計5つの区域がワインランドに属している。
南アフリカ・ワインランドを代表するパール、フランシュフック、ステレンボッシュの三つの町(上地図)を結ぶこの区域を、適当かどうか分からないが、私はあえて「南アフリカ・ワイン・黄金の三角地帯」と呼ぼう。
現在、南アフリカ国内には合計700を数えるワイン醸造所(ワイン・セラー)があるとされ、「黄金の三角地帯」で最もケープタウンに近いステレンボッシュ地区にはその20%強、約150の醸造所があり、南アフリカのワイン産業の最前線に位置していると言える。

この地域で栽培されているブドウはほとんどヨーロッパ品種と同様で、シャンパンの原料にもなっているが、フランス・ブルゴーニュ地方を象徴するシャルドネ種(白)、ボルドー地方などと同じソーヴィニオン・ブラン種(白)、あるいは「アルザス・ワイン街道(下写真)」でおなじみのリースレイング種(白)など。
また、赤ワイン用では典型種でもあるピノ・ロワールを交配して南アフリカ特産にしたピノ・タージュ種(赤)などが主な種類とされる。南アフリカ・ワインランド地方で生産されるワインの品質は、フランスなどヨーロッパ産ワインに引けを取らず今や世界的にも高いランクに位置され、日本を含め、かなりの量が海外輸出されている。

ワインランドのワインカーブ醸造所では、ティスティング試飲は当然だが、ほとんどがレストランを併設、ケープタウン地区ではケープ半島へのツアー観光に劣らないほどの人気あるツーリストスポットになっている。また、「ワイン・黄金の三角地帯」を含む、ボーランド Boland 山地地域は、上述した通り、世界に類を見ない植物の宝庫であり、この山地区域を含め、ケープタウン周辺のケープ植物保護区はUNESCOの世界遺産に登録されている。

アルザス・ワイン街道・エグイスハイム/(C)legend ej
       「フランスの最も美しい村」・アルザス・ワイン街道・エグイスアイム村/花を飾ったワインカーブ

ケープ半島/ケープ植物保護区/喜望峰自然保護区

ケープ半島の自然
地理的には南アフリカ大陸の最南端はアグラス岬 Agulhas であるが、多くの人はケープタウンが「最南端」と信じている。美しい街ケープタウンはアグラス岬より緯度的には85kmほど、直線距離では140kmほど西北寄りの位置となり、正確にはケープタウンはアフリカの「最南端」ではなく、「南端部の最も有名で美しい街」と言うことができる。

ケープタウンンから直線で50kmほど南方の大西洋へ細長く延び出ているのがケープ半島である。厳密に言えば、ケープ半島先端は1kmほど離れて「二つの岬」を形成している。
大西洋側に突き出た崖と丘のような岬が喜望峰 Cape of Good Hope、他方のインド洋側の標高差のある岩山がケープ岬(下写真 Cape Point)となっている。子供の頃から名称だけは知っている有名な喜望峰は、地図の上では大西洋に面するアフリカ大陸の「最南西端」の場所となる。

喜望峰とケープ岬を含むケープ半島先端一帯は、喜望峰自然保護区 Cape of Good Hope N.R と呼ばれる国立公園に指定されている。この自然保護区は80Ku弱の広大な区域を占めている。また同時に、ここはUNESCO世界遺産に登録されたケープ植物保護区域の一部でもある。


雄大な風景&絶景/咲き乱れるワイルドフラワー
喜望峰自然保護区は面積が大きいことから、ビジター・アクセスは健脚の人なら自転車でも可能だが、オートバイや車が一般的で、少なくとも町からかなり離れていることもあり、徒歩でのアクセスやトレッキングは現実的ではない。オートバイや車なら、ケープ半島の中間付近、半島の東側の穏やかなフォルス湾のサイモンズタウンから延びている舗装道路M4号を選択して、蛇行しながらグイグイと高度を上げ、見晴らしの良い尾根高原のような場所に設けられた保護区の唯一の管理ゲートで入場料を支払い、さらに走行して喜望峰とケープ岬を目指すことになる。

自然保護区内は荒涼とした平原と断崖を含む岩山、ワイルド・フラワー群と背の低いブッシュ潅木など、生育する約2,500種以上の植物群がどこまでも続く雄大な風景を形つくっている。ただ背の高い樹木類は保護区内の管理センターの回りに数本確認できる程度でまったく見当たらない。
見渡す限り続くブッシュ潅木と草の大平原も、花の季節の春8月〜9月の頃にはピンクや紫色の花を付けるエリカの種類を初め、ゼラニウムの仲間やミズバショウに似た砂地に群生するホワイト・アルムリリーなど、無数の色鮮やかなワイルド・フラワーで一面覆われる。

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断崖絶壁のケープ岬
管理ゲートから快適に延びる舗装道路は保護区内にある管理センターを過ぎてから、二つの岬に達する4kmほど手前で道路がT字路で分かれる。喜望峰への道路は右方向の海側へ向かって下がって行き、一方ケープ岬へは直進で若干登り傾向となり、半島先端の少し手前のパーキングで行き止りになる。
ヒヒが忙しく動き回るパーキングで下車後、10分毎に運行している古風な形式のケーブルカーに乗車すれば、所要3分ほどで岩山の頂上に建つ旧灯台近くの上駅まで登れる。上駅の周囲は安全柵を備えた階段通路が廻らされ、展望台の役目も果たしている。特に急階段を登った丘の頂上の旧灯台からは、遮る物のない360度の素晴らしい展望が期待できる。

旧灯台のドーナツ状の足回り部分は、10人ほどで満席となる狭い空間であるが、ケープ半島で最高の展望が利く場所なのでぜひとも登って見たい。ただし常に強風が吹付けているので身体の保持には最大限の注意が必要である。
130mの断崖絶壁のケープ岬(下写真 Cape Point)の直下の沖合いでは、東の暖かいインド洋と西の冷たい大西洋の海水がぶつかり合い、その温度差による微妙な潮目ができ、若干海は変色して見える。

南アフリカ・ケープ岬 Cape-point/(C)legend ej
        高さ130mのケープ岬の絶壁へ打ち寄せるの10mの高波/ケープ半島・喜望峰自然保護区

訪れた現地が春に相当する10月は比較的穏やかな天候であったが(上写真)、6月は時期的に現地の冬の季節にあたり、晴れてはいるが台風並みの風速30mの強風が吹き叫び、海は大荒れ状態であり、砕け散った10m近い高波がアフリカ南端の岬に襲いかかっていた。1月前後、当地が真夏となる時期では波は非常に穏やかになることが多いと聞くが、冬のアフリカ南端の海は吠え続け静まることを知らない。

高波の砕け散る絶え間のない迫力音を聞き、大型カメラを装着した三脚も倒され、身体さえも飛ばされそうになる強風に耐えていると「とうとうアフリカ大陸の南端まで来た!」という感動と実感が湧いてくる。
展望台(旧灯台)から下るようにして、さらに100mほどケープ岬の正しく先端 Point へ歩いて行けるが、狭い通路は絶壁の尾根に造られ、ロープの手すりこそあるが、強風の時は単純に歩行ができる場所ではないので、安易な興味本位とチャレンジ精神は控えるべきである。

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荒れ狂う喜望峰の海
展望台から西方向を望めば、ケープ岬側から崖上の曲がりくねった約1kmのトレッキング・ルートが伸び喜望峰(下写真 Cape of Good Hope)へと続く。天候が良好の春から秋の時期にはこのルートは歩くこともできる。
喜望峰はケープ岬よりかなり低い位置だが、海へせり出した崖とも岩山と言っても良く、観光者用の看板のあるその海岸には、荒れた海からのおびただしい量の昆布に似た海草が打ち上げられ、休むことなく大西洋から10mの高波が打ち寄せる。

南アフリカ・喜望峰 Cape of Good Hope/(C)legend ej
                 ケープ岬から1km先の喜望峰を展望/喜望峰自然保護区

吹き付ける強風によって海草の半乾きの濃厚な匂いがさらわれて行く。この際、「海の香り」などという日本的な美しい比喩などまったく思い浮かばない厳しい大自然の姿だ。この喜望峰ではアフリカ大陸の最南端地域の荒々しく、近寄りがたい光景に言葉を失う。
有名な観光地で良く有り勝ちな笑顔の記念写真も、ここ喜望峰の看板ボード前までは、ロングの髪がヤシの葉のように大きく乱れ、誰もが微笑もなく、何故か力のこもらない「Vサイン」となるのは、やはり大自然の驚異に圧倒されてしまうからであろうか?
同じ岬でも日本の犬吠崎とか、三浦岬などは足元にも及ばない大自然の驚異な風景に飲み込まれてしまいそうな気分になる。ピッチの長い巨大なうねりが押し寄せ、高さ10mの白波は地響きを伴って砕け散る。ウキウキ感動は消え失せ驚きと恐怖の光景である。

ケープ岬からケープタウン方向を振り返れば、大平原の彼方に半島の大きな部分を占める1,000m級のテーブルマウンテンの雄大な山並みが控えている。アフリカ南端までやって来ると、何処を眺めても何から何まで雄大で圧倒的なスケール感に酔ってしまう。このケープ半島の沖には大海原だけ、距離はあるにしても、この先は南極大陸しか存在しない。ここはまさに「最果ての地」なのである。

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ケープ半島の野生動物
2008年10月初旬、ケープ半島・喜望峰自然保護区ではヒヒを目の前、ダチョウを10mの至近距離から、白いお面を付けたような顔付をしたボンテボックと500kg〜600kgもあろうかと思う大型エランドなどのアンテロープ類を50mほどの距離から確認できた。そのほかでは、ケープ・ゼブラ(シマウマ)、ダチョウや小型アンテロープ類なども生息してる。
ただ、当然のことだが、この地域には南アフリカ北部に点在する広大なサバンナ地帯での野生動物との遭遇・「ゲーム・サファリ」と同じような猛獣やゾウやキリンなどは居ないし、生息動物の個体数も少ない。

また、ケープ半島に生息するヒヒの個体数は多く、彼らの生活の場は自然保護区内だけでなく、保護区からサイモンズタウンへ向かう山岳道路沿いの住宅地やフォルス湾岸の道路上でも車に近寄ってきた。ケープ半島のヒヒは人の存在に関係なく、容赦なく突然接近してくるので、特にパーキングで車を止めドアーを開ける時などは、ヒヒに十分な注意を払う必要がある。
関係者の話では、過去に幾らかのツーリストがヒヒに食べ物などを与えてしまったことから、人の集まる場所にヒヒがやって来て、車から下車した瞬間、ドアーからヒヒが車内へ飛び込む不意をつく事故が後を絶たないと言う。パーキング場のヒヒを甘く見てはいけない! 非常に危険で動きがあまりに速い!
人間がエサを与えてしまった結果、人間の社会へ入り込んで来ている「問題児」のヒヒだが、南アフリカではヒヒなども手厚く保護すべき対象動物に指定されているので、追い払うことはできるが、人間がヒヒに対して攻撃的な行為を与えることはできない。

南アフリカの野生動物との遭遇では、ケープ半島地域で期待するより、下記のような内陸地方に点在する途方も無く広大で数万頭の野生動物が群れる国立動物保護区での「ゲームサファリ」を推奨する。

南アフリカ・ゲーム・サファリ・ライオン/(C)legend ej
           アフリカライオン(メス)/クルーガーズドープ動物保護区/コテージ西南西1km付近
          野生動物との遭遇/南アフリカ・サバンナ草原の「ゲームサファリ」


Amazon 出版(大久保栄次 著)「南アフリカのゲーム・サファリ」・「南アフリカの人類発祥の地
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Ref.
喜望峰・インド航路/15世紀の快挙
中世15世紀、ヨーロッパの歴史において、スペインとポルトガルのキリスト教勢力によるイベリア半島からのイスラム勢力の駆逐運動(レコンキスタ)は、カスティーリア王国イザベラT世とその夫であるアラゴン王国フェルナンドU世のキリスト教徒合同軍によるグラナダのアルハンブラ宮殿(下写真)の奪還により、1491年、ようやく終焉を向かえる。
以降、スペインとポルトガルにとっては、海外への進出と交易ルートの確保が最重要の課題となり、国はこの目標を達成すべき勢力を注ぎ込むことになる。特にアフリカとインドへの進出意向の動きはめざましく、レコンキスタ運動終焉前から、早くもアフリカ沿岸への進出と城塞の建設を行ってきた。

1488年、ポルトガル王の命を受けたB.ディアスが初めて喜望峰まで船を進め、この地がアフリカ南端であることを発見した。これ以降、この岬は王によりインド航路への期待を込めて「喜望峰 Cape of Good Hope」と令名された。その後、1497年になると、ヴァスコダ・ダ・ガマが4隻の船団を率いて喜望峰からインド洋へと回り込み、東アフリカ沿岸〜アラビア海に面するインド南部まで進出することになる。
アフリカ南端の喜望峰の発見により、ヨーロッパとインドは完全に海上ルートで結ばれ、ヨーロッパは歴史的な「大航海時代」を迎える。さらに1492年のコロンブスによるカリブ海諸島の発見、16世紀のマゼランの世界一周も加わった。
以降、特にヨーロッパ・インド航路は胡椒などの香辛料や絹織物などのアジアの産物を大量にヨーロッパ諸国へもたらし、ポルトガルとスペインはその交易取引の中心的な役割を果たしさらに発展することになる。


              アルハンブラ宮殿・アラヤネスの中庭とコマレスの塔
            世界遺産/スペイン・グラナダのアルハンブラ宮殿/コルドバのメスキータ寺院

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