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行政首都プレトリアの春/青紫色のジャカランダの咲き乱れる感動的な光景 |
● プレトリアの春の季節/青紫色のジャカランダの花 プレトリアの市街は標高1,300m〜1,400m、マガリース山地の東端、大地の皺(しわ)が織り成す東西に延びる複数の丘陵を挟んでに発達してきた。市内には大小のなだらかな形容の丘がアクセントのように点在して、豊富な緑と共にプレトリアの街に穏やかな特徴を与えている。 南アフリカの行政首都プレトリアは、国と州政府機関を初め、大学など教育機関、国立動物園、フルンクルーフ自然保護区や他の無数の保護区、猿人の骨化石で有名な人類学のディソング国立自然史博物館(旧トランスファール博物館)や多くの美術館、ポール・クルーガー大統領邸宅などの歴史的な記念館群、美しい景観の住宅街、そして、郊外には金鉱山も含めた繁栄の産業団地も広がっている。 「南アフリカの桜」と比喩されるジャカランダは世界的に知られている美しい花である。南米原産と言われるジャカランダがプレトリアへ持ち込まれたのは1880年代とされる。以降100年ほどの間で市と市民による株分けが行われ、プレトリアには現在7万本以上を数えるジャカランダの木が植えられている。 特に9月下旬〜10月、日本では秋だが現地の春の季節、満開のジャカランダが咲く行政首都プレトリア(上写真)を彩る鮮やかな光景は余りにも有名で、大都市ヨハネスブルグなど南アフリカ各地、あるいは日本を含む海外からも大勢のツーリストが「青紫色の街プレトリア」へやって来る。 この季節、ケープタウンと同じく美しい街並みを誇るプレトリア(2000年以降正式名: ツワネ Tswane)では、公共の建造物の周辺を初め、豪奢な邸宅が建ち並ぶ高級住宅街の並木や公園、庭園や一般家庭の庭先にまで植えられたジャカランダが、一斉に青紫色の釣鐘型の花を付ける。 ● 青紫色の街プレトリア展望/美しい行政首都 日本大使館のある地区、立ち木のない草原のフルンクルーフの丘には市水道局の大型タンク4基があり、その東側には通信タワーと車5台ほど停められるパーキングスペースがある。 ジャカランダの花咲く春の頃、このパーキングスペース付近から北方の日本大使館方面へ向かって眺め下ろすプレトリアの市街は、圧倒される輝きの青紫色に包まれた春爛漫の美しい光景と化す(上写真=9月下旬)。花の色彩こそ日本の桜とは異なるが、藤の花に似た神秘的な青紫色のジャカランダの花は、乾燥した南アフリカの褐色の大地に美しい彩りを添えている。 |
● ディソング国立自然史博物館 プレトリアにあるトランスファール博物館 Transvaal Museum は2010年4月以降、博物館の名称が変 更され、ディソング国立自然史博物館 Ditsong National Museum of Natural History と改名 された。 有名な260万年前の猿人・「Mrs. Ples」の頭骸骨 化石はこの博物館内で展示公開されている。 博物館の正面は歴史を感じさせる堂々たる市庁舎で この周辺はユニオン・ビル地区に比べ、経験論では若 干セキュリティに不安がある地区とも言える。 スワートクランス洞窟出土・200万年前の猿人頭蓋 骨化石/プレトリア・ディソング国立自然史博物館 世界遺産/「人類発祥の地」スタークフォンテン洞窟 |
● ナマクアランド地方(ナマクワランド)/ワイルド・フラワーの宝庫 南アフリカの西北部・北ケープ州、ナミビアとの国境地帯の南側のエリア、大西洋沿岸では比較的おだやかな形容の平原や荒野が続き、そのさらに東方内陸には風化花崗岩の乾燥した広大な半砂漠地帯が広がっている。 このうち比較的大西洋に近い東西200km 南北400kmの範囲では、日本の夏の7月頃にあたる南半球の冬の季節、大西洋の寒冷前線から湿気を含んだ気流が流れ込み、「ナマクアランド Namaqualand」と呼ばれる樹木の少ない複雑な丘陵地形のこの一帯に僅かに降雨をもたらす。 ナマクアランド地方の降水量は多くとも年間150mm以下と言われ、年間1,500mm以上を示す温帯にある東京の1/10程度である。乾燥したこの地域にあって、その僅かな恵の雨を頼りにする無数の野生植物ワイルド・フラワーが、春の初めとなる8月〜9月に一斉に開花する。 すべてのワイルドフラワーが言葉通り一瞬に咲き、1週間程度で枯れて行くのではなく、植物の種類毎に次から次へと咲き、そして枯れて行くのである。その咲き誇る期間は降雨量と場所、植物の種類により異なり、全体ではおおよそ1か月間程度の間でワイルド・フラワーの花の共演は終了する。 限定された短い春の季節、地平線まで続く大平原や荒野、渓谷、乾燥した半砂漠地帯が、一面ワイルド・フラワーのお花畑と化す自然の驚異は信じられない現象で見事と言うほかになく、この地方が「世界最大級のフラワーランド」と呼ばれる所以である。 |
● ナマクアランド地方の中心/銅鉱山の街 フラワーランドの中心は、マナクワランド地方のほぼ真ん中に位置するスプリングボック Springbok の町である。住民約15,000人のスプリングボックは、アフリカで最も美しい都市と言われるケープタウンから高速道路N7号を560kmほど北上した乾燥地帯である。 スプリングボックは周辺に開発された数か所の銅鉱山を背景に、数軒の小ホテルや10軒のゲストハウスやレストラン、大型スーパーマーケットや近代的な病院なども並び、競技グランドも備えた活気のある地方都市で、予想外に小奇麗な雰囲気が漂っている。 スプリングボック周辺のみならず、ナミビア国境地帯を含め、普段は乾いた風化花崗岩の大地の広がる何の変哲もない土地に、春の花の季節に限って言えば、草原も、平原という平原も、岩の荒野であろうとも、乾燥の半砂漠であっても、何処でも赤・白・黄・青・オレンジ・ピンク・紫色の花、花、花 ・・・ 鮮やかなワイルド・フラワーの色彩の大洪水が怒とうのように押し寄せる。 南アフリカ・北西部/北ケープ州〜西ケープ州/ナマクアランド地方〜ハンタム大平原 作図=Web管理者legend ej マナクワランドで見たワイルドフラワー |
野性のナマクアランド・デージーの広大な花の絨毯(じゅうたん)/ナマクアランド(ナマクワランド)地方 ※NHK番組・「趣味の園芸」・「京も一日陽だまり屋」 放映写真に採用される/2016年10月 ----------------------------------------------------------------------- ● カミエスクルーン村/ナマクア国立公園/スキルパッドWF保護区 スプリングボックから高速道路N7号で70kmほど南下すると牧畜と農業のカミエスクルーン村 Kamieskroon となる。この村の北側からオフロードで牧場的な2つの集落を抜け、北西へ約20kmほどの丘陵地帯へ入ると、世界に知られた総面積687Kuを誇る南アフリカ・ナマクア(ナマクワ)国立公園 Namaqua NP に組み込まれたスキルパッド・ワイルドフラワー保護区 Skilpad WFR を訪れることができる。 春の季節、スキルバッド保護区では、標高700mの約10Kuの管理丘陵が一面鮮やかなオレンジ・イエローの絨毯と化す。満開のナマクアランド(ナマクワランド)デージー Namaqualand Daisies が平原を埋め尽くし、この世のものとは思えない非常に美しい風景(上写真)を見ることができる。 単色オレンジ・イエローの眩いほどのナマクアランド・デージーで染め上げられた波打つ丘陵が放す圧倒されそうな原色絵画を眺めていると、保護区を管理する若い黒人係官達の言うナマクアランドの「花の魔術」に酔ってしまいそうだ。 葉はシンプル、茎が細く、可憐な1年草である高さ15cm〜20cmほどのナマクアランド・デージーの開花時期は、冬7月頃の降水量と気温、そして風の強弱など、微妙な自然条件の違いでかなり変則されると言われている。短い春の季節、限られた自然条件のもと、鮮やかオレンジ・イエローを精一杯発色するナマクアランド・デージーは、風が弱く、通常17℃以上とされる気温の上昇した晴天の昼間の時間帯のみ、花弁を広げる非常にデリケートな「天からの美しい使者」である。 ナマクアランド・デージーの種子の殻(種皮)は非常に固く、たとえ翌年の冬に雨が降らない場合でも、地面の下で乾燥から種子内部の栄養分を数年間も守り抜き、さらに次年の降雨を期待して発芽のチャンスに備える、と保護区の若い黒人レンジャーが語っていた言葉は印象的である。 |
● ワイルド・フラワーの「爆発」する時期と規模 東西200km 南北400kmの及ぶナマクアランド地方では、春の季節になるとこれらのワイルド・フラワーが「チャンス到来!」という感じで一斉に、正に時をまったく同じにして爆発的に花を咲かせ、花の盛りこそ短期であっても、世界最大級の「お花畑/野生のフラワーランド」が出現する。 何しろ、生育する約3,000種の植物のうち、花を咲かせる植物がほぼ同時に開花する。その上、咲く花は限ることのない数百kmもの途方もなく広い範囲にわたって展開するのである。例え自宅でどのような花を育てていようとも、ナマクアランドへやって来た人は、あまりに恥ずかし過ぎてもはや「ベランダ・ガーデニング」の自慢話は絶対に出来なくなってしまう。 数千種のワイルド・フラワーが一斉に花を咲かせる、というこの自然の壮大な営みをもって、南アフリカのナマクアランド地方は、植物学的、あるいは地理学的にも「地球上の稀な地域」とも言われている。 岩場に咲く野生のアフリカキンセンカ属 Dimorphotheca Sinuata ディモルホセカ系デージー オステオスベルマム系に近似するこの花の群生は至る所に見られる/北ケープ州 |
● 植物分布・植生バイオーム/ケープタウン周辺=フィンボス帯 アカデミックでは、南アフリカの植物の分布と地域を表わす植生バイオーム Biome は7区域に区分されている。特に世界的に有名なのは、アフリカ最南端のケープタウン(下写真)周辺のフィンボス帯 Fynbos と呼ばれる植生帯、そこでは年間500mm前後の降水量のもと約9,000種の植物が生育して、しかもその半分以上がこのフィンボス帯の固有種と言われている。 ケープタウンの夜景/旧市街(手前)〜港湾地区〜新市街(遠方)/ケープタウン 世界遺産/南アフリカ最南端のケープタウンと喜望峰 ----------------------------------------------------------------------- ● 植物分布・植生バイオーム/半砂漠カルー帯 「南アフリカ・フラワーランド」と呼ばれるナマクアランド地方を含む、 北ケープ州の西部一帯と西ケープ州の内陸地域は、多肉植物・半砂漠カルー帯 Succulent Karoo に属している。1,500種〜1,700種と言われるアロエ・ディコトマAloe- Dichotoma やサボテン科などの乾燥に強い多肉植物や球根の地中植物、風化花崗岩の砂利の荒野に育つトゲトゲの低木、カルーナ・ブルガリスやヒース(エリカ)に似た潅木的な植物まで、約3,000種が生育している。 学名・「アロエ・ディコトマ Aloe-Dichotoma」 は、南アフリカや ナミビアの乾燥地帯に生育するアロエ科の比較的背の高い常 緑多年草、背丈10mに成長したディコトマも珍しくない(左写 真)。 見た目が「矢を収めた筒」から別名クィヴェール Quiver-Tree、 現地アフリカーンス語ではコカルブーン Kokerboom とも呼ば れている。 通常は乾燥した荒涼たる岩石平原や草木のない岩丘陵など に単独で突っ立っているが、林立する特定な場所は「アロエ・ ディコトマの林」と呼ばれている。 アロエ・ディコトマの林では、北ケープ州ハンタム大平原のニュー ウィッツヴィル村の北東20km、直径11kmのほぼ円形状の面 積を占めるガンナボス自然保護区 Gannabos Nature Reserve などが知られている。 乾燥地帯に突っ立っているアロエ・ディコトマ |
● 自然保護区 スプリングボックの南東約6kmにある小型機の飛行場脇を通り抜け、東方へさらに8kmほど奥まった標高900m〜1,000mの丘陵の谷間には、フーハップ(ゲーハップ)自然保護区 Geogap NR が広がっている。 丸みを帯びた花崗岩が露出する浸食丘陵と砂地なだらかな平原を含む、約14,900ヘクタール(12km x 12km相当)の保護区の広大な敷地では、600種近い植物と45種ほどの生息動物、約100種の鳥類を見ることができる。 一般のビジターはまず飛行場の近くの管理ゲートで入場チェックを受けてから、保護区の専用道路を進み、笑顔のスタッフが待つ管理センターで登録と入場料支払いを行う。 その後、自家用車やセンター所属のツアー車に乗り、保護区内、一周約15kmのオフロードの周遊ルートを1時間〜2時間前後かけて、ゆっくりと時計りでトレイルして回り、平原の隅々まで埋め尽くされた無数のワイルド・フラワーを観察・観賞できる。 花崗岩質の平原を黄色に染めるデージー系のワイルド・フラワー 北ケープ州スプリングボック近郊/フーハップ(ゲーハップ)自然保護区 ※NHK番組・「趣味の園芸」・「京も一日陽だまり屋」 放映写真に採用される/2016年10月 ---------------------------------------------------------------------- ● 銅鉱山オキープ村/ナバビーク村の花園 スプリングボックの北方6km、国道N7号脇に銅鉱山のオキープ村 O'Kiep があり、村は1855年に銅鉱山が開発された後、すでに1世紀半以上の鉱山の歴史を誇る。オキープ村の高速道路N7号線から別れ、オフロードで西方へ12km入ったやはり銅鉱山で開けた町ナバビープ Nababeep の周辺の平原はワイルド・フラワーを愛する人達の間では、花の季節には一面のお花畑が出現することが良く知られている。 ナバビープの町の北と西側は鉱山地区であるが、特に南側に広がる標高800m前後の僅かに傾斜する幅2kmの平原は、早春8月〜9月、色とりどりの無数のワイルド・フラワー、赤や黄、白や青紫色の美しい野生の花のパッチワークが出現する。 |
● ナマクアランド(ナマクワランド)情報 言語分類から考えると、現在の南アフリカの西北部、ナミビア南部、そしてボツアナ西南部地域に広がるカラハリ砂漠周辺に住むコイコイ族(旧ホッテントット族)とサン族(旧ブッシュマン族)の人々が話す言語を合わせて「コイサン語」と呼び、その内特にコイコイ族の話す「コイコイ語」が古くから「Nama ナマ」、あるいは「Namaqua ナマクア」と分類されていた。 またコイコイ族を「ナマ族」と呼ぶ場合もある。その結果、コイコイ族が多く住む地域が「ナマクアランド(ナマクワランド)」と呼ばれるようになり、現在でもコイコイ族はカラハリ砂漠周辺におおよそ25万人を数えると言われている。 ただ今日のツーリストの称呼する「ナマクアランド」とは、言語学的に特定された地域ではなく、明らかに北ケープ州北西部、特に春の季節のワイルド・フラワーに関連付けられた東西200km 南北400kmほどの「花咲く地域」を限定的に指していることが多い。 |
● 荒涼たる大自然の風景 スプリングボックの北方のナミビアとの国境には、全長2,200kmの砂漠の大河オレンジ川が渓谷をつくり蛇行しながら流れている。スプリングボックから国境地点フィウールスドリフト Vloolsdrif まで高速道路N7号で約80km、オレンジ川はこの地域で大きく逆U字を描くようにカーブしながらさらに北上して国境線を描き、ナミビアへ深く入り込み大西洋へ流れ下る。 その半円状に膨れ上がった最北部が、深い峡谷で世界的に有名なナミビア側のフィッシュ・リバー渓谷公園 Fish-River Canyon PK と連合し合っている、南アフリカ側の越境公園であるリヒタースフェルト・トランスフロンティア国立公園 Richetersveld Transfrontier NP である。 面積1,610Ku、日本の佐渡島の2倍ほどの途方もない広さを誇るこの南アフリカ側の国立公園の平均降水量は、東京の1/20以下の年間たった70mmほど。現実に現地を訪れると、茫漠たる岩砂漠、そして最高峰は標高1,395mであるが、そのほとんどは樹木の育たない標高400m〜600m前後の荒涼とした複雑な形容の山岳地形で占められていることが分かる。なお、この地域は「リヒタースフェルト・文化的・植物学的な景観」としてUNESCO世界遺産に登録されている。 リヒタースフェルト・トランスフロンティア国立公園の植生区分バイオームは、スプリングボック周辺と同じ多肉植物・半砂漠カルー帯に属している。が、生育する植物種は南部より乾燥が顕著のために限定的となり、1Kuあたりで約360種程度と言われている。 |
● ファンリンスドルフ大平原/ファンリンスドルフの町 ナマクアランド地方〜高速道路N7号をさらに南下、植生バイオームで多肉植物・半砂漠カルー帯に属しながら西ケープ州のウェストコースト地方の行政区となり、南アフリカ・フラワーランドの南端の一役を担う地方に至る。その中心は東西60km 南北100km、地平線まで穏やかに波打つ大平原のファンリンスドルフ(ヴァンリンスドープ Vanrhynsdorp)の町である。 人口3,000人、大平原の町ファンリンスドルフは決して大きくなく、町の南側に水の少ないクレイン川 Klein が流れ、高速道路N7号の入口付近に2か所のガソリンスタンド、ホテルはなく、ペンション形式のゲストロッジが宿泊ツーリストを収容する。そのほか町には小規模のスーパーマーケットや雑貨店が、民家とともに整然と升目状に仕切られた区画に並ぶ。 |
● クランウィリアムの歴史 ファンリンスドルフから高速道路N7号をさらに南下すると徐々に大地に緑が増え始め、植生は降水量が年間500mm前後へ少しだけ増加するケープ・フィンボス帯の最北部となる。 その中心は「南アフリカ・ワイン街道」でもあり、マンダリン・オレンジ(みかん)やオレンジなどの柑橘類、そして今や世界の健康志向の人々に知られたルイボス茶を産するオリファント川(ゾウの川/Olifants R)の河畔に開けたクランウィリアム Clanwiliam やシトラスダル Citrusdal の町である。今日、クランウィリアムを中心とするワイン街道の村々で作られた多くの南アフリカ産のワインが日本へも輸出されている。 クランウィリアムは18世紀の初頭から町つくりが行われて来た歴史ある洒落た町である。町には「メイン・ストリート」と呼ばれる600mほどの直線道路に沿って、2か所のガソリン・スタンド、銀行や大型スーパーマーケット、ホテルや幾らかのゲストハウスなどがある。尖塔が印象的な白亜のオランダ改革派教会と古い英国教会、旧牢獄(博物館・観光案内所)などの歴史的な建物も建ち並び、旧牢獄から緩やかな坂を南西方向へ少し上ると学校や病院、ルイボス茶の加工工場などがある。 ● オリファント川のダム 標高100mのクランウィリアムの直ぐ西側を流れるオリファント川には、高さ43mのコンクリート堤体により堰き止められたクランウィアム・ダムがある。ダムは1億2,000万m3の貯水能力のダム湖を形成している。ダム湖からの取水は幅5m〜6mほどの長大な農業用水路を伝い、クランウィリアムの市街北側と下流14km付近のオリファント川の右岸のワイン・ブドウ畑と農耕地までを潤している。 ● ラムスコップ・ワイルドフラワー・ガーデン クランウィリアムの町の病院とルイボス茶の加工工場の西側で、ダム湖畔近くの丘陵にラムスコップ・ワイルドフラワー・ガーデン Ramskop WFG があり、この地方の植物とワイルド・フラワーの約350種以上をびっしりと植え込まれ一般公開を行っている。 ここは給水などを行っている管理植物ガーデンで、ナマクアランド周辺のワイルド・フラワーの花の盛りが終わっていてもここではまだ沢山の花が満開で咲いているので、手軽に花と植物を観賞できることから多くのツーリストが訪れている。ワイルドフラワーの咲く現地の春(日本=秋)、クランウィリアムの町では「クランウィリアム・ワイルドフラワー・ショウ Clanwiliam Wild Flower Show」が開催される。 |
● パークホイス峠 900m/セダーバーグ野性保護区 歴史あるクランウィリアムから東方へ延びる州道路R364号は、市街地に近い最初の区間はアスファルト舗装だが、形の良いの円錐形を成す標高480mのスピッツコップ山 Spitskop の脇を過ぎるあたりから無舗装オフロード(2008年/その後⇒全面アスファルト舗装施工)となる。 道路を徐々に登って少し下り、さらに一気に長い登坂を続けると標高900mの荒涼たるパークホイス峠 Pakhuis Pass へ至る。峠を越えヘ急勾配のアピン・カーブを下って行く平原の植生は、ナマクアランド地方と同様な多肉植物・半砂漠カルー帯である。 途中、道路は面積ではナマクア国立公園より広い710Kuを誇る無数のワイルド・フラワーと奇岩トレッキングなどで有名なセダーバーグ・ワイルド保護区 Cederberg WR の北端部を通過している。 ● ブッシュマン岩絵保護区/高級ホテル&ロッジ/花咲くビエドウ渓谷 パークホイス峠を下ると約15kmで水量は少ないがブランディウィン川 Brandewin R となり、なおもオフロードを6kmほど東進すると南方へ右折する道路との交差点となる。ここから見晴らしの良い尾根を南方へ向かうほぼ直線オフロードを10kmほど進むと抜群のパノラマが展開する峠となる。ブッシュマンの岩絵地区はこの尾根オフロードの右手(西方)に位置している。 パノラマの峠の南下方には露岩のビエドウ川 Biedou R がゆったりと流れ、潅木と岩地の混在する斜面を持つ穏やかな形容の丘陵に囲まれた緑濃い雄大なビエドウ渓谷が展開し、巨大な岩壁や半洞窟の岩場に残されたブッシュマンの岩絵と渓谷の自然保護を行っている「ブッシュマン・クルーフ・ワイルド保護区&ホテル Bushmans Kloof Wilderness Reserve and Hotel」がある。 ホテルでは岩絵ツアーだけでなく、白黒のお面のような顔付きで長い節状角の大型のゲムスボックやケープ・マウンテン・ゼブラなどの野生動物を探すゲーム・サファリ、デージーなど広大に展開するワイルドフラワー散策、ビエドウ川カヌーやハイキングツアーも企画している。 訪ねた2008年、ビエドウ渓谷一帯はデージー系をメインに750種 以上とも言われるワイルドフラワーが咲き乱れていた。その競演する花々の美しさは、色鮮やかなパッチワークキルトとなり、雄大な渓谷平原を見たこともない原色プラチナカラーで隙間なく染め上げていた。 |
● 南アフリカで最も乾燥地帯 赤茶けたオフロード州道路R364号をブッシュマン岩絵方面へ向かわずに、北東方向へ170kmほど走行すれば、風景は徐々に変化して、ナマ・半砂漠カルー帯と呼ばれるカルヴィニア Calvinia を中心とする乾燥したハンタム大平原 Hantam Rural(下写真) へと至る。 途中には、テーブルマウンテンの深い渓谷と多肉植物が群生する乾燥した雄大な平原と山岳地帯が広がり、高い樹木のまったくない乾燥した風化丘陵の裾などに目印のように、アロエ・ディコトマがポツンと突っ立っている荒涼たる風景が続く。夏季、気温50℃を超すカルヴィニア周辺が南アフリカで「最も乾燥した地域」とされる。 半砂漠カルー地方/オーグラビス大滝/ハンタム大平原カルヴェニア周辺 標高1,000mハンタム大平原から望むハンタム山系テーブルマウンテン(標高1,200m〜1,400m) カルヴィニア近郊 |
● カツオドリ営巣保護区 クランウィリアムから快適なアスファルト舗装の州道路R364号で広大な草原と耕地が続く中を西方へ60km走行するとランバーツ・ベイ Lamberts Bay の村となり、観光案内所、ホテルが1軒、数軒のゲストハウスが宿泊客を迎えている。 ロブスター(イセエビ)の水揚げ漁村として有名なランバーツ・ベイは、大西洋からの強風の中に静かに佇んでいる。春の季節には、周辺をワイルド・フラワーで埋め尽くされるちょっとしたリゾートを思わせる明るいランバーツ・ベイには、5〜6軒のシーフード・レストランや魚の加工工場、白亜のきれいな教会などもある。 ランバーツ・ベイでは、沖合いまで延びる桟橋を兼ねた堤防を200mほど歩めば、頭部から頚部にかけて淡いベージュ色をしたケープシロカツオドリのコロニーであるバードアイランド Bird-Island(下写真)となる。 波で洗われ丸みを帯びた岩場と砂地、そしてムール貝などのおびただしい量の貝殻が目立つこの島には、コンクリート製の軍事用トーチカを想像させるような造りの観察用施設がある。 ビジターは1Fがガラス窓、2Fがガラス窓を外した覗き窓的な場所から、「ギャーギャー」と鳴きながら巣を守る25,000羽以上と言われるカツオドリの生態を10m余りの至近距離から詳細に観察できる。多くのツーリストは大西洋の高波と強風で押し寄せられた海草の放つ独特な匂いとカツオドリの鳴き声とその個体数に圧倒される。 バードアイランドのケープシロカツオドリの営巣地/大西洋沿岸ランバーツ・ベイ |
● ルイボス茶 ルイボス茶とは、大西洋に平行するようにウェストコースト地方を南北に走る標高1,600m級セダーバーグ山脈の西麓、特にクランウィリアム周辺が有名で、また最近になり需要の伸びから耕作を始めた東方の乾燥した高原台地であるニューウッツヴィルやカルヴィニア周辺のみで生産されるマメ科の植物アスパラサス・リネアリスを原料とした加工ハーブ茶である。 アカデミックでは、リネアリスの仲間は280種もあるとされ、多くは成長すると最大1.5mほどの高さになり、その花は鮮やかな黄色で、花弁の裏面には短い繊毛がある。中でも農薬や肥料などを一切使用しないで栽培されるこの薬草とも言えるアスパラサス・リネアリスの杉のような針葉の葉は、ノンカフェイン・低タンニン質で、この葉や茎を添加物や着色量などをまったく使用しないで発酵させ、乾燥したものがルイボス茶である。 このルイボス茶には血糖値を抑える抗酸化作用や老化抑制などの成分が含まれるとされ、古くから健康への有効性が評価されてきた南アフリカの代表的な飲み物である。なお現地の古いアフリカーナ語(サン族/旧ブッシュマン族)では、リネアリスの緑の葉が徐々に赤茶色へ変色してから収穫することから、この茶は「赤い藪(やぶ)」を意味する「ロイボス」と呼ばれている。 最近、都内の大型スーパーなどでも輸入販売を始めている。現地の南アフリカでは日常的に飲用される「大衆茶」であり、はっきり言って信じられないくらい安価であるが、さすが地球の反対側から日本へ輸入されるで結構高価で販売されている。 |