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ストラスブール旧市街/イル河畔の伝統的なレストラン群/アルザス地方 |
● 風情をかもすイル河畔 ヨーロッパに戦争が起る度に地政学的にも、幾度となく国境線が引き直された混乱の歴史、そして文化面においてもストラスブール Strasbourg を初め、東部フランスのアルザス地方は東隣のドイツの影響を色濃く受けた地域と言える。ドイツとの関わりでは、特に建物の建築方法に関して、独特な建築仕様である木骨組みの「コロンバージュ様式」はその典型と言え、ストラスブール旧市街を流れるイル河畔の数軒のレストランの建物群もその例である(トップ写真)。 橋端にある建物が、私もここで食事をした経験があるが、天井の低い複雑な階層造りの「レストラン・Au Pont Saint Martin サン・マルタン橋」である。真冬の冷え込んだ大気の中にあって、川面に映るレストランの鮮やかな姿は他の建物もさることながら、寒さを忘れさせてくれるようなより一層の華やかで暖かい雰囲気をかもし出している。 ツーリストに人気のある旧市街の「プチット・フランス Petite France」の100m下流に架かる橋の端にあるこのレストランでサーブされる料理は、ザワークラフトやポテトを添えたソーセージ料理である「シュークルト」、あるいは肉と野菜を丁寧に煮込んだ濃厚な味の地方料理などで、いずれも手頃な価格でアルザスの美味を堪能することができる。 特に運河沿いの分厚い木製テーブルを確保して、水面に映る趣のあるUNESCO世界遺産の旧市街の風景を眺める時、味わう美味な地方料理とリースリングに代表される「アルザス・ワイン街道(下写真:エグイスハイム村)」からの白ワインのほのかな酔いは、旅する人を優しく、そして心豊かにしてくれる。こんな時、人は正に「ヨーロッパ」を感じ、単なる観光者から心で旅する「旅人」へと変身したような心境に入っていける。ストラスブールはそんな魅力に溢れている街である ・・・ |
Webページ・「アルザス・ワイン街道」は「北部」〜「中部」〜「南部」の三部構成・個別ページとなっています;
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「フランスの最も美しい村」・アルザス・ワイン街道・エグイスアイム村 アルザス・ワイン街道 「花咲く美しい村」 アンドー村/描画=Web管理者legend ej 秋の頃 黄金色に染まるワイン用ブドウ畑に囲まれた聖アンドー礼拝堂とブドウ栽培の農家 アルザス・ワイン街道・オベルネ周辺 アルザス・ワイン街道(ライン下流県)/作図=legend-ej アルザス・ワイン街道(ライン上流県)/作図=legend-ej アルザス地方の農道・地方道で見かける標識 標識のある農道・地方道は「アルザス・ワイン街道」 アルザス地方の村々や町の端にある標識 標識のある自治体は「アルザス・ワイン街道」のブドウ栽培とワイン造りの村々と町 |
● 真冬、ストラスブール旧市街・「プチット・フランス」の夜 傾斜のある屋根にわずかな粉雪が積もり、壁面に柱や梁がむき出しのままのこのフランス・アルザス地方の伝統的な木骨組み造り・コロンバージュ様式の家々の明かりが、中世を今に伝える旧市街・「プチット・フランス」の運河を淡く照らす。 夜更け、氷点下近い気温、大気は深々と冷え込み、アルザス地方の中心であるこの古い街ストラスブールの人通りの少ない運河沿いの石畳通りは、静寂な時間に包まれている。UNESCO世界遺産に相応しい上品な雰囲気と深みのある美しさが漂う。 ロマンティックな物語を求め、腕を組み合ったカップルがささやくようなフランス語で言葉を交わしながら、雰囲気のある夢のような時間の中を静かに歩んで行く。運河に響くその二人の足音がしだいに遠ざかる頃、キラキラとかすかな粉雪が舞い始めてきた。澄み渡った真冬の大気はキリキリと更に冷え込んで来た・・・ ストラスブール旧市街/真冬 静かな「プチット・フランス」の夜/アルザス地方 ● 真夏、ストラスブール旧市街・イル河畔の輝き 輝きの夏のストラスブール旧市街・「プチット・フランス」の運河周辺は、真冬とはまったく異なった風情と明るさをかもし出す。 世界各地からのラフな支度のたくさんのツーリスト達で賑わい、フランス語、英語、ドイツ語、イタリア語など、あらゆる国の言葉がこだまのように重なったり和音となったりして、石畳の広場の大きなプラタナスの木陰のカフェ・レストランは、日焼けしたヨーロッパの笑顔のツーリスト達で終日満席となる。 ストラスブール旧市街/真夏 輝きの「プチット・フランス」の昼下がり/アルザス地方 静かな運河にはあくまでも真っ青に澄み渡ったアルザスの空が色付けされたように映り、清々しい乾いた夏の微風が吹き、白壁と木骨組みのむき出しの柱や窓辺に飾られた鮮やかなゼラニウムの赤い花が目に眩しい。夏のヨーロッパの輝きの時間、ストラスブール旧市街の美しいシーンは、人の心を穏やかにしてくれるような気がする。これこそがアルザス地方の眩しい「夏の時間」だ。 |
● 「大きな島・グラン・ディル」 ストラスブール市内を穏やかに流れ、市の東方でスイスからオランダへ流れ下るライン川に合流するイル川は、市の中心部手前で大きく二手に分かれ、旧市街を囲むように流れた後に再び合流する。結果、ストラスブール旧市街は運河に囲まれたような東西1,300m 南北1,000mの長方形に近い「大きな島/グラン・ディル Grande Ile」を形成することになる。古くから、ストラスブールの街は、この「大きな島」を中心に発達してきた。1988年、UNESCOはこの島状の旧市街区域を世界遺産に登録している。 ● ノートルダム大聖堂 ストラスブールは過去にドイツとフランスとの所属権争いから国籍が何度も変わるほど歴史の中で翻弄されてきた街の一つであり、その激動の歴史と文化の融合の遺産が街のそこ彼処にたくさん残っている。 ストラスブール市内でツーリストに人気があるのは、かつて革なめし業や漁業の職人達の住居区であった運河沿いの伝統的な建物が連なる旧市街・「プチット・フランス」、そして、西方のヴォーズ山地産の赤色砂岩を使ったロマネスク様式・ゴシック様式混在の世界遺産・「ノートルダム大聖堂」である。 ストラスブールの「ノートルダム大聖堂 Cathedrale Notre-Dame de Strasbourg」では、時計の見える南トランセプト付近や金色に輝くドーム型の内陣などは12世紀ロマネスク様式、身廊は1225年頃〜40年間ほどの期間で造られたゴシック様式である。 その建築基本は、パリから北方へ130kmのアミアンにある大聖堂をモデルにしたとされる。アミアン大聖堂は1121年に着工されたフランス盛期ゴシック様式の最高傑作の教会堂の一つとされ、高い身廊の天井や特徴ある高窓の設計などが、当時神聖ローマ帝国に属していたストラスブールの大聖堂の建築技術に採用された。 30kmの彼方からも見えるという、1439年建造のノートルダム大聖堂の尖塔の高さは142mを誇り、ストラスブールのランドマークになっている。17世紀〜19世紀にはノートルダム大聖堂より高い塔をもっていたほかの教会堂が火災を起こし崩壊したことから、この間大聖堂の尖塔は世界で最も高い塔であった。 連続的な細微な装飾と彫刻で埋め尽くされた西正面ファサードの扉口のタンパン部(左下写真)と三角破風、そして大型ステンドグラスの円形バラ窓などは13世紀後期〜14世紀の作である。この精緻精巧な作品群の技法は「レヨナン様式」と呼ばれている。円形や放射状の細かな装飾様式、レヨナン様式で満たされたノートルダム大聖堂の西正面ファサードは、フランス盛期ゴシック様式の最高傑作の一つと言われている。 ストラスブール大聖堂・西入口/アルザス地方 アルザス・ワイン街道・タン参事会教会堂・西入口 アルザス・ワイン街道(南部)ロウファッハやタン/コロンバージュ様式の美しい村々/第一次大戦の激戦地の丘 地元の石材を使った大聖堂の身廊内部は、その赤色砂岩の影響からか若干暗さを感じる。だが、天井まで32mの高さがあることで圧迫感はまったく感じられない。また、内部にはミサを初め、市内のコーラスグループのコンサートなど、現在でも使われる聖なる響きを奏でる14世紀後半のパイプオルガンが備えられ、あるいは色々な人形とキリスト像や12使徒が現れる200年近い歴史をもつ世界最大級の黄金色に輝くカラクリ時計などもある。 2007年の冬のストラスブール滞在では、関係者からの招待があり、運良く大聖堂の内陣で有名な市内コーラスグループの合唱公演を鑑賞させて頂く機会を得た。専属パイプオルガン奏者の奏でる響きのある伴奏に乱れのない男女コーラスが、二重三重の和音をつくり誠に美しい調べを鑑賞した。 また、大聖堂の西入口ファサードを飾る精緻精巧な作品群の技法、「レヨナン様式」と呼ばれている装飾では、アルザス・ワイン街道のヴォージェ山地の谷間の要衝タン旧市街に建つ聖ティエボー参事会教会堂の西正面ファサード(右上写真)、あるいはスペイン・グラナダのアルハンブラ宮殿の圧倒されるアラベスク模様装飾(下写真)などにその施工技術の共通点を連想したくなる。 |
アルハンブラ宮殿・ライオン中庭/美しく精緻なアラベスク装飾(ムカルナス装飾) 世界遺産/スペインのグラナダ・アルハンブラ宮殿/コルドバのメスキータ寺院 ● 東フランスを代表するストラスブールのノエル(クリスマス)の季節/人々の心躍る時期 寒さが徐々に厳しくなるクリスマス(ノエル)前の季節、アルザス地方の町や村の夜の美しさはさらに磨きがかけられる。ストラスブールは「フランス最大級」のクリスマス・マーケットが開かれ、世界遺産・ノートルダム大聖堂の周辺はもとより、クレベール広場に巨大なツリーが立ち、中世の面影を残す旧市街のあらゆる通りや広場、そして各家庭の室内や窓辺やドアーに至るまで、聖なる飾りと照明で溢れる。 クリスマス時期 ストラスブール大聖堂付近/アルゴス地方 雑音に近い街頭音楽が流れる「年末商戦」だけのドンチャン騒ぎと言える日本のそれとはまったく異なり、クリスマス前のこの時期のストラスブールでは、「これこそヨーロッパの本物のクリスマス!という感動するほどのドラマティックな雰囲気に満たされる。市内の人々は家族連れで、あるいは恋人同士で、風がまったくなく氷点下にキリキリと冷え込んだ大気に吐く息も白く、暖かいコートの襟を立て旧市街へ繰り出す。 運河の「プチット・フランス」などの古風なレストランで地元産の白ワインに酔い、ソーセージ料理や肉や野菜を煮込んだドイツ風に近い美味しいアルザス料理を食して、パートナーや子供達のために明るく照明されたショップでクリスマス・プレゼントを探す。キリスト教世界、聖なるクリスマスを迎える直前は、大都市ストラスブール旧市街のみならず、コルマール旧市街(下写真)など、ドイツ文化を継承するアルザス地方の人々の静かな興奮と期待をこめた、一年で最も重要で最も楽しい心躍る時間である。 |
コルマール旧市街の深夜/クリスマス〜新年のレストラン群/アルザス地方 アルザス・ワイン街道コルマール周辺 ● 旧市街の多くの美術館・博物館 個人的な経験論で言えば、「アルザス地方博物館 Musee Alsacien」は、ストラスブール旧市街を囲みながら流れるイル川の南河畔沿いの通りにある古い建物に入っている(23 Quai St-Nicolas)。 ここはストラスブールを訪れるツーリストの隠れた人気スポットと言えるだろう。1900年代初頭に造られた博物館は、通りから分かり難い通路状の入口を入り、パッと明るさを提供する細長い中庭を囲む伝統的な建築様式、コロンバージュ様式で造られた邸宅式の複雑な建物である。 壁や階段や窓辺は美しく黒く光沢塗装され、女性雑誌の特集ページに掲載されるような非常にシックな佇まいを見せている。博物館自体は決して大規模ではないが、展示品はアルザス地方の生活用具や陶器、幾らかの民族絵画などである。小さなカフェもあり、中庭に面する美しい佇まいを見るためだけで訪れるツーリストさえもあり、ストラスブールの知る人ぞ知る必見の場所と言える。 また、アルザス地方博物館のみならず、ストラスブールは古くから発達した大都市であり、大聖堂の周辺、世界遺産の旧市街には数多くの美術館・博物館が点在している。例えば、アルザス地方の守護聖人オディールに関する≪聖オディールの生涯≫のタペストリーを収蔵するストラスブールの「エーヴル(傑作品)ノートルダム博物館 Le Musee de l'Oeuvre Notre-Dame」がある。 博物館はストラスブール大聖堂の南広場に面する階段状破風(いらか段)の切妻様式の6階建ての建物である。ここでは11世紀〜16世紀に遡るストラスブールの歴史、特に大聖堂を飾った傑作聖人像を初め、市内とアルザス地方の町やシャトーなどからのゴシック様式の絵画、ステンドグラス作品、タペストリー、金細工品などを展示している。 所蔵品のほとんどは中世の宗教関連、15世紀のオランダ・ライデン生まれのニコラス・ゲルヘルト作の彫像やストラスブールの西南西23kmのミュティグのシャトー・ロハン城館 Chateau Mitzig de Rohan からの15世紀作の多色木像の「聖母子像」などもある。 アルザス地方の守護聖人オディールのホーエンブルグ女子修道院(モン・サントディール)情報: アルザス・ワイン街道(北部)オベルネ周辺/コロンバージュ様式の美しい村々 そのほかでは、「エーヴル・ノートルダム博物館」の直ぐ東側、ロアン大司教の「ロアン宮殿」内にある三つの美術館・博物館も見逃せないだろう。宮殿内には中世ルネッサンス期〜19世紀の世界的に知られた傑作品を展示する「絵画美術館 Musee des Beaux Arts」、17世紀以降の陶器・装飾品などの「装飾美術館 Musee des Arts Decoratiff」、アルザス地方の考古学的な発掘品や中世の石像などを所蔵する「考古学博物館 Musee Archeologique」が入っている。 あるいは、「アルザス地方博物館」の北側を流れるイル川の Corbeau 橋を渡り、河畔の北側(大聖堂側)の「歴史博物館 Musee HIstorique」は武器など歴史に興味がある人なら充実した内容品を見ることができる。 |